紙飛行機のおまじない
「…よし、出来た!」
誰もいなくなった放課後の教室で私は一人、紙飛行機を折っていた
何故紙飛行機かというと、理由は本当に単純なもので
『紙飛行機に好きな人への告白文を書き、それを飛ばして5秒間落ちなければその恋が叶う』と、所謂おまじないの類を親友に勧められたからだ
正直半信半疑でしかなかったが成功者が何人もいると豪語する親友に根負けし、冒頭の紙飛行機製作に至るのだった
「ホント、誰もいなくて良かったよ。こんなトコ誰かに…いや、特に藤木くんに見られたら恥ずかしい所の騒ぎじゃないし。」
自分の席で簡単な告白文を書きながら後方の一席、藤木遊作くんの席を見やる
クラスで目立つ存在じゃないけれど、私が困っていた時に何も言わず手を貸してくれたカッコ良い男の子
恋心を自覚するまでに時間は掛からなかった
「えーっと…5秒間落ちなかったら成功って事だよね。それ!」
出来上がった渾身の紙飛行機に一抹の願いを込め、軽く投げてみる
しかしその紙飛行機は私のように不器用だったらしい、真っ直ぐ飛ばずに内窓から廊下へと飛んでいってしまった
「ちょ、待って待って!待っ……」
「みょうじ?」
逃げ出した紙飛行機を追い廊下へ出た所、紙飛行機は直ぐに見つかった
藤木くんの手の中という、生き恥にも等しい所に
「これはみょうじのものか?」
「え、えっと……あー…その通りです、ハイ。」
翼部分にくっきりと『藤木くんが好きです』と書かれた紙飛行機を持った藤木くんは一体どんな気持ちなんだろうか
…さようなら、私の恋心
「俺も好きだ。」
「…え?」
「俺も、みょうじが好きだ。」
真顔で淡々と私に告白する藤木くん
前略、親友さま
おまじないの効果かはわかりませんが、私の恋は叶いました
紙飛行機のおまじない
―――――
おまじないは私がパパッと考えたものです。勿論効果はありません。