不器用な彼の優しさ


「…あれ、此処は?」


さっきまでLINKVRAINSにいた筈なのに、気が付くと私は知らない空間にいた

上下左右、何処までも真っ白な場所はまるで病院のようだった



「誰か……あっ、スペクター!」


自分以外に誰かいないかと周囲を見渡していた所、仲間のスペクターの姿を見つけて声を掛ける

「ねえスペクター、聞こえないの?」


でもスペクターは私の声が聞こえていないのか、背を向けたまま去ってしまった



「…何で?あっ、博士!…博士!?」


スペクターを見失ってから直ぐに鴻上博士を見つけたものの、博士もスペクターと同じように背を向けたまま去ってしまう



「みんなどうして…?」


スペクターも博士も背を向けたまま消えてしまった事に不安感を覚えた瞬間、眼前にリボルバーがいた事に気が付いた

だが彼も皆と同様、私の存在に気付いていないのか背を向けたまま歩き出してしまう



「待ってリボルバー、待って!」



此方を振り返らないリボルバーに向かって私は無我夢中で真っ白な空間を走り出す

走っても走っても追い付かない、彼の背に必死で手を伸ばした



その時誰かに身体を揺さぶられる感覚を覚え、急に意識がはっきりしてくる



「なまえ!」

「…リボルバー?」


ああそうか

私は博士の最後の計画を進める為の実験中、気を失って倒れていたんだ



「大丈夫かなまえ、何処か痛むなら直ぐにログアウトして医療機関へ行った方がいい。」

「大丈夫、ちょっと頭がぼんやりしてるだけだから。……それより、リボルバーは何処にも行かないよね?」



気を失っている最中に見た光景が忘れられず、私は不安な表情のままリボルバーの手を取った

そんな私に対し彼は何も言わず、ただ自分の手を重ねて力を込める


「…ありがと、リボルバー。」


不器用ながらも感じる彼の優しさに私の中の不安感は一瞬で払拭されていったのだった


不器用な彼の優しさ

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無我夢中って言葉を使いたかったんです。
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