もしもの話
「おーい遊作くん、翔一。久しぶりー!」
いつもと変わらず学校帰りに草薙さんの店へ寄っていた所、店外から明るい声が聞こえてくる
車外に出て確認するとそこには草薙さんの知り合いのハッカー仲間、なまえさんが手を振っていた
「おうなまえ、久しぶり。依頼されてた仕事は終わったのか?」
「当然!報酬もバッチリ貰ってきたよ。」
満面の笑みでピースサインを作るなまえさんと楽しげに話す草薙さんを眺めていた所、俺に気付いたなまえさんが此方へ歩み寄ってきた
「遊作くんも元気だった?」
「まあ、そこそこ。…というか早々に頭、撫でないで下さい。」
「だって遊作くん可愛いからさあ。…あ、翔一も可愛いよ。」
「キモい事言うな。」
なまえさんは俺の事を弟のように思っているのか、会う度に頭を撫でてくる
他の誰かに触れられるのは不快極まりないが、彼女に触れられるのは何故か不快にはならなかった
「…そうだ!今日は報酬も入ったし、なまえおねーさんが遊作くんにディナー奢っちゃう!」
「いや、俺は別に…」
「いいからいいから!翔一はたっぷり稼いでるだろうから、デザートだけ奢ってあげる。」
「おいなまえ、お前…俺の扱いだけ粗雑過ぎるだろ。」
草薙さんの文句は何処へやら、俺と草薙さんの手を引いて勝手に店仕舞いを始めるなまえさん
勝手気ままで気紛れな部分が多々ある彼女だが、もし俺に姉がいたらこんな風に毎日振り回されるのだろうか
だが、彼女相手ならやはり悪くはないかもしれない
そう思っている自分に多少驚きを覚えつつ、俺は小さく口元を緩めた
もしもの話
―――――
急に敬語の遊作を書きたくなったので。