奇妙なのはお互い様
「なまえ、調子はどうだ。」
「リボルバーさん。ええっと…まあまあ、ですかね。」
VR空間の一室に置いてあるベッドから半分起き上がっている女、なまえに声を掛ける
一見、何処にでもいそうな普通の人間だ
「まあ、体は眠ったままみたいなんでよくわからないのが本当の所なんですけど。」
「…そうか。」
なまえは首を縦へ振りながら頷く様子を見せたものの、次いで紡がれる内容に一瞬言葉が詰まる
VR空間で偶然出会ったなまえという人間はデュエリストではなく、ましてやハノイの騎士やSOLテクノロジーの関係者でもなかった
そんな普通の人間が何故VR空間をうろついているのか気になった私はその女を軟禁し、色々と尋ねて情報を聞き出す
その精査した情報を纏めた結果、なまえは病か何かしらの症状で現実世界では眠ったまま、そして此方の世界では意識を保っている奇妙な状態でいる事がわかった
電脳ウイルスの事が頭をよぎったがあれはどちらの世界でも昏睡状態が続く代物、我々の関知するものではなかった
「でもリボルバーさんが私を見つけてくれて良かったです。ずっとこの空間にいたけど、誰も私を気に止める人なんていなかったから。」
「随分と楽観的だな。いつ目覚めるかわからない状態なんだろう?」
「うーん…確かにそれを言われると返す言葉がないんですけど。でも、今はリボルバーさんが話し相手になってくれてるからそれだけで十分かなって。」
「…奇妙な女だ。」
そう言ってへにゃりと笑う女、なまえに思わず毒気を抜かれそうになるのを何とか抑える
こんな女を軟禁している自分自身も十分奇妙なんじゃないだろうか
そんな考えを打ち消すように頭を振り、私はなまえがいる一室を立ち去った
奇妙なのはお互い様
―――――
リボルバーさん、いい声してますよね。