まるで少女漫画のような
「あー…もう、ついてないったらありゃしない!」
貴重な昼休み時間、私はそう叫びながら散らばったプリントや資料をかき集める
午後の授業で使う資料を昼休み中に教室へ運ぶよう近くにいた田中と先生に頼まれたものの、奴はすっかり忘れて友達とサッカーをしに行ってしまったらしい
田中の馬鹿野郎と思いつつ一人で一生懸命運んでいたのだが、膨大な紙束の所為で前がよく見えず階段から盛大に転げ落ちてしまい今現在に至る
しかも転んだ拍子に右足を捻ったらしく、立ち上がる事もままならない状態
「…田中許すまじ。」
此処にいない男子生徒の名を恨めしく呟いた瞬間、ふと誰かが近くへ立ってる事に気が付く
よくよく見ると、それは同じクラスの藤木遊作くんだった
「あれ、藤木くん?」
「みょうじ、こんな所で何をやっている。」
「先生からの頼み事を忘れて遊びに行った田中の所為で一人で運ぶ事になった挙げ句、転んで足を捻って資料をぶちまけた。このザマですよ。」
やっとかき集めた資料を抱えつつ、右足を指差してみる
すると藤木くんは何を思ったのか一瞬しゃがみ込むと私を腕に抱え…所謂、お姫様抱っこというやつで階段を下り始めた
「ちょ、え!?重いでしょ藤木くん、下ろしていいよ!最近お菓子食べ過ぎてるし!」
「重くない。大人しくしてないと余計に足、痛めるぞ。」
「……はい。」
涼しい顔で私を抱えていく藤木くんにやっぱり男の子なんだなあと思いつつ、少女漫画のような展開に胸の鼓動が一気に速まるのを感じた
まるで少女漫画のような
―――――
全国の田中さん、すみませんでした。