雨の日の何気ない優しさ
「あーあ、やっぱり降ってきちゃったか。」
授業を終え帰ろうと玄関で靴を履いたのも束の間、一瞬で大粒の雨が降ってきた
朝から雨が降っていた為傘は持ってきていたのだが、学校へ来る途中の強風で見事に傘の骨は折れてしまっていたのだ
此処で暫く待てば止むだろうか
そんな事をぼんやり考えていた所、ふと隣に人の気配を感じた
「あれ、藤木くん?」
「みょうじ…だったか。こんな所で何をしている。」
隣にいたのは同じクラスの藤木遊作くんだった
あまり話した事もないし稀に授業中いなくなってる時もあるが悪い人ではないのだろう、多分
「今朝来る時に傘が壊れちゃってさ、雨止まないかなーって待ってるとこ。」
「そうか。」
一言二言話して訪れる沈黙
彼も雨宿りをしているのかと隣を向こうとした瞬間、いきなり眼前に紺色の大きな傘を差し出された
「これを貸す。」
「え?…いやいや、これ藤木くんの傘でしょ?君こそこれ使って早く帰った方が…」
「明日返してくれればいい。」
微妙に答えにならない答えを返した後、藤木くんは降りしきる雨の中を走りながら去っていった
「…やっぱり、悪い人じゃないみたい。」
明日、お礼ついでに話し掛けてみよう
そんな事を思いながら私は大きな傘を開き、外への一歩を踏み出した
雨の日の何気ない優しさ
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傘を差すのが面倒な人間なので、基本的に大雨でなければ走って凌ぎます。