敵わない相手


「ねえ、了見。」



ハノイの塔を起動する為にプログラム構築の作業をしていた所、2歳上の幼馴染であり恋人でもあるなまえが温かなコーヒーを私の近くへと置きながら尋ねてくる


「何だ、なまえ。」

「あの時、黙ってSoulburnerにやられるつもりだったの?」

「…見ていたのか。」

「まあね。」


なまえは幼い頃から私の一歩先を行くような人間で、彼女の前では嘘や取り繕う言葉等は何も意味を成さないという事はわかっていたが…

こうも容易に私のプログラムを突破されてしまうとはな



「あの事件で父の犯した罪は消えない、許されようとも思っていない。…だが今は人類存続の危機が掛かっている、我々が争っている場合ではない。」

「だからロスト事件…ひいてはハノイの騎士を憎んでるSoulburnerに負けてでも話を聞いてもらおうと思ったワケ?」

「そうだ。」



我々を憎んでいる彼が素直に私の話を聞くとは到底思えない

ならば気が済むまで彼にやらせる事が一番無難な方法だろう


なまえが淹れてくれたコーヒーを口にしながら再度プログラムを構築し始めた中、突然なまえがコツンと私の頭を小突いてきた



「なまえ、何をする。」

「あの事件、了見に罪はないよ。」

「なまえ…。」


なまえが言いたい事は理解している

だが、そうでもしないとSoulburner…彼の気が済む筈もないだろう


そう考えて口を開こうとしたまさにその瞬間、今度は後ろからなまえが私を抱きしめてくる



「男の子って本当、素直じゃないねえ。」

「…私が素直ではないと?」

「だって私以外には了見、素直に言う事を聞いたりしないでしょ?」


にこりと微笑むなまえに対し、私は何も返せなくなってしまう

何故なら、それは私自身がよくわかっていたからだ



「全く…なまえには敵う気がしないな。」

「どういたしまして。」

「褒めてはいない。」

「知ってる。」



なまえの前で何を言おうと、彼女は私のずっと先を進んでいる為に難なく説き伏せられてしまう

結局私が何を言った所で、なまえには敵わないのだ


敵わない相手

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成人の日にちなんで少し大人な主人公を。
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