最初で最後のキス
「俺はちょっと用事を済ませてくる。その間、人間達に見つかるんじゃねーぞ。」
「了解っす!」
SOLtisを利用し現実世界で動ける体を手に入れ、クイーンからコードキーを奪う事も出来た俺はある場所へと向かう
自由に動ける体を手に入れた時から向かいたかった、アイツの所へ
「ここだな。」
眼前には如何にもセキュリティがしっかりしてそうなマンションがそびえ立っているものの、俺にとってはセキュリティなんて無いに等しいもの
簡単に突破しある一室の扉を遠慮なしに開けた所、そこには一人の人間がいた
「よっ、なまえ。」
「だ、誰!?っていうか、鍵!鍵掛けてたのに!」
「誰とはご挨拶だな。俺だよ、俺。」
「その声……もしかして、Ai…?え、本当にAi?戻ってきたの!?」
「あー…まあちょっと、な。」
目の前で驚きと喜びの入り交じった表情を浮かべているこの人間はなまえ
遊作や草薙達の仲間で俺が目玉状態だった時からずっと可愛がってくれてた、俺にとって特別な人間だった
「まさかSOLtisを使って人間みたいな姿になってると思わなかったなあ。でも無事で良かった。草薙さんは勿論、遊作も顔には出さないけど、心配してたんだよ。」
「悪いなまえ。実は戻ってきた訳じゃねえ、俺はお前に別れを言いに来たんだ。」
「…何それ、冗談でしょ?」
そう言ったなまえの顔は明らかに動揺していて、心なしか声も若干震えてるようだ
それでも俺はなまえに伝える
俺にはやらなきゃいけない事がある
だからもうお前に会う事は出来ないと
可愛がってくれたなまえにとって、非情な宣告を
「…やっぱり納得出来ない!だってAiは私達の仲間でしょ!?私達が傍にいたら出来ない事って何?ねえAi、何とか言っ……あ、れ…?」
「ごめんな、なまえ。」
最早感情に任せて掴みかかって来そうな勢いのなまえの意識を一時的に奪い、近くにあったベッドへと寝かせる
「もう決めたんだ。この意志はなまえにも変える事は出来ねえ。…じゃあな。俺が大好きだった、なまえ。」
意識を失ったままのなまえへ送る、最初で最後のキス
願わくはこの先の未来、なまえが幸せに生きてくれる事を
ただそれだけを願い、俺はなまえの部屋を後にしたのだった
最初で最後のキス
―――――
姿は変わってもAiはAiでしたね。