04
「うーん…草薙さんからお留守番を任されたけどなかなかお客さん来ないね、遊作くん。」
「そうだな。」
なまえと二人で出掛けてから数日後、草薙さんから店の留守番を任された俺達は広場で店番をしていた
「さっき葵ちゃんが来てくれてから本当、広場に人がいなくなっちゃったもんねえ。」
「言われてみれば確かに。」
そういえば数分前に財前葵が来ていたか
以前助けてもらった礼を兼ねて注文しようとしていたが、俺も親切の押し売りをしようとしてた訳じゃない
だから断ったのだが、それを見ていたなまえに『遊作くんは素直じゃないから』と謎のフォローをさせてしまった
…別に言葉通りの意味だったんだが
「あっ、これ。この前行った移動動物園の時の写真?」
「ああ。」
その時なまえが俺の端末に表示されていた写真に気付いてそちらを指差す
それは数日前に二人で行った移動動物園でスタッフに撮影してもらった写真で
財前葵が店へ訪れた際に彼女となまえが話していた間、少しだけ見ていたのを忘れていた
「あの移動動物園のうさぎちゃん、可愛かったよね。また行きたいなあ。」
そう言って数日前の思い出を懐かしむ彼女に鼓動が少しだけ、速まる
「…なまえ。」
「ん?」
「次に行きたい所が決まった時は、また…」
そう言葉を紡いでいた瞬間、俺の端末から呼び出し音が鳴り響く
相手は草薙さんだった
「ああ、草薙さんか。店は何とか…なんだって!?」
その内容は当然現れた謎の人物に草薙さんの弟の意識データが奪われたというもので
LINKVRAINSに逃げ込んだその人物を追ってほしいと頼まれた
「遊作くん、私も行こうか?」
「…いや、なまえは此処にいてくれ。」
今のLINKVRAINSでは俺…Playmakerは賞金首として追われる身となっている
世間でPlaymakerの仲間と認識されている彼女も訪れれば共に追われる事になるのは手に取るようにわかる
「わかった。…でも、気を付けてね。」
「ありがとう、なまえ。」
少しだけ不安を覗かせるなまえに対し俺は心配ないと彼女の頭を撫で、車内の奥にある一室へ足を踏み入れる
「into the VRAINS!」
僅かな間訪れていた平和が音を立てて崩れていった事を
俺達はまだ、知るよしもなかった
忍び寄る、混沌の足音
―――――
本編突入です。