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「明日退院出来るんだってね。良かったね、なまえさん。」
「ありがとう、穂村くん。」
なまえが意識を取り戻した次の日、面会が許された俺達はなまえの元へ見舞いに行った
俺達が見舞いに訪れるとなまえはとても嬉しそうにしながら明日にも退院出来る事を告げてきた
彼女が意識を取り戻した事は素直に嬉しいし、退院出来る事も喜ばしいとわかっている
ただ昨日見た不可思議な出来事
あれは俺の見間違いだったのか、それとも何か別の現象だったのか
その事が気になりこのまま彼女を退院させて良いのかと俺は一人、悶々と考え込んでいた
「あとね、遊作くんもありがとう。」
その事で考えを巡らせていた所、ふとなまえが俺に向かって礼の言葉を告げてくる
「いや、俺は何もしていない。」
「ううん、そんな事ないよ。だって遊作くん、ご飯や寝るのも後回しにして私の傍にいてくれたんでしょ?」
「誰がそれを…」
『ユウサク!ユウサク!』
「…お前か。」
昨日急に手元から離れて何処かへ行ったと思っていたが、隙を見てなまえの所へ行っていたとは予想もしていなかった
…そういえばなまえが意識を取り戻した時にコイツも近くにいたが、あの時の事をコイツはなまえに話したのだろうか
「なまえ。」
「ん?遊作くん、どうかした?」
「……いや、何でもない。」
「ふふっ、変な遊作くん。」
例えこのAIロボットが仮に話していたとしても、明日に退院を控えたなまえに不安を掻き立てるような話はこの場ではしない方がいいだろう
一つ間違えれば悩みの種となり、なまえの表情を曇らせてしまう事に繋がるのだから
「僕達、明日の退院時間に合わせてまた来るよ。遊作もいいよね?」
「ああ。」
「二人とも、本当にありがとう。また明日ね。」
『バイバイ!』
笑顔で手を振るなまえとAIロボットに別れを告げ、俺達は静かに帰路へ就いたのだった
あの出来事は内密に
―――――
再び本編に戻ります。