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「俺は…俺は決めたんだ。不霊夢と共に新たな一歩を踏み出すと!」
「AIと共にだと?笑わせる。やはり貴様のようなデュエリストは俺の前から消えてもらおう。」
「消してみろよ、バトルだ!」
俺がトラウマを克服していると知らずに仕掛けてきたブラッドシェパードの猛攻を演技で騙しつつカードの効果で何とか凌ぎ、ダイレクトアタックが可能となったがヤツのフィールドには一枚の伏せカードがある
しかし此処で臆したら、今までの事が全て水泡に帰してしまうだろう
不霊夢と共に一歩を踏み出すと決めた俺は自分の為、そしてこの空間に巻き込んでしまったLittle Red Hood…なまえさんを助ける為にヤツへダイレクトアタックを試みる
だがヒートライオの攻撃がヤツへ届くまさにその瞬間、俺達がいるこの空間が消滅し始めた
「一体何が起きてるんだ。」
『空間が消滅していくぞ!』
気付いた時にはその混乱に乗じてブラッドシェパードが撤退している姿が見えたものの、後を追う間もなく俺となまえさんは元のLINKVRAINSへと強制的に戻された
「Soulburner!」
「何だよ、後ちょっとで勝つとこだったのに。…って、そうだPlaymaker!Little Red Hoodがあの空間に巻き込まれてからずっと意識が戻らないんだ。」
「何!?」
俺の腕の中で眠るように意識を失ったままの彼女を見たPlaymakerは一瞬動揺の色を見せたものの、直ぐに普段通りの表情で草薙さんに連絡を取り始めた
「草薙さん。SoulburnerとLittle Red Hood、どちらとも合流した。…ただ、Little Red Hoodは何らかの理由で意識を失っている。強制ログアウトを頼む。」
『なまえが!?わかった、こっちでのログアウトを試みる。お前達も早く戻ってくるんだ。』
「わかった。」
短い返事ながら、彼が焦燥感に駆られている事は直ぐに理解出来た
きっとそれほどまでに彼女…なまえさんが大切なんだろう
「……まさかこんな状況で失恋を認識するとはね。」
『どうした、Soulburner。』
「…いや、何でもねえよ。俺達も早く戻ろうぜ、不霊夢。」
例えこの想いが届かなかったとしてもなまえさんは俺の大切な友人、早く意識を回復させてやりたい
その想いに変わりはない
僅かに胸が痛む事に対し気付かないフリをしながら、強制ログアウトした彼女を追うように姿を消したPlaymakerに続き、俺もLINKVRAINSを後にした
彼女への想いを片隅に追いやって
―――――
二人の関係性を察して自ら身を引いた感じで書きました。