01
ハノイの騎士が滅びてから約3ヶ月
同時にAiがサイバース世界へと帰り、それと同じ時間が経過していたのだとふと思う
アイツは故郷でもあんな風にうるさくしているんだろうか
そんな事を考えながら草薙さんの手伝いをしていた所、草薙さんが妙に真剣な顔をして俺の前に立ち塞がった
「どうしたんだ、草薙さん。」
「遊作…お前、なまえと付き合ってるんだよな?」
「まあ、そういう事になる。」
「なのにお前ら揃いも揃って、デートに行ったりしないのかよ!」
そう言って草薙さんは俺と店の外にいるなまえを指差して声を上げる
確かになまえへ自分の想いを伝え、彼女がそれに応えてくれた後も二人で何処かに出掛けた事はなかった
それはなまえが何も言わなかった為、特に出掛ける事は望んでいないのかと考えた結果だったのだが…
「…お前、なまえが出掛けたいって言ってなかったからとか考えてるだろ。」
「……。」
どうにも顔に出ていたらしい
草薙さんに心の中を読まれてしまった
「今日はあんまりお客さん来ないね。遊作くん、草薙さん。…二人とも、変な顔してどうしたの?」
そんな中店から離れていたなまえが戻ってきたが、彼女は俺達を交互に見ながら不思議そうに首を傾げている
「…いいか、なまえ。明日は新作メニューを考えるから店、休むからな。」
「えっ、だって明日は土曜日だよ?一番お客さんが来る日なのに。」
「いーや、明日は店を開けない。だから明日は広場に来ても店はやってないぞ。」
頑なに店を開けないと一点張りの草薙さんの態度に対し、これは暗になまえと何処かへ出掛けてこいという言葉なのだと理解せざるを得なかった
「…なまえ。明日、時間はあるか?」
「うん、時間はあるよ。」
「二人で何処かに出掛けないか?」
俺がそう告げればなまえは一瞬驚いたものの、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべて頷く様子を見せる
そのなまえの後ろで草薙さんが安堵したとも疲れたとも取れる、盛大な溜め息を吐いていた事を俺達は知る由もなかった
草薙さんからある意味での圧力
―――――
最早草薙さんが親みたいなポジションに。