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「Playmaker達、行っちゃった。」
『まあとにかく、彼等が帰ってくるまで此処で大人しく待ってなよ。Playmakerにもそう言われてただろ?』
「うん、そうだよね。」
僕がそう促せば頷いてその場にしゃがみこむLittle Red Hoodという名の少女
PlaymakerやSoulburnerと違い、彼女はロスト事件で僕らの元になった被験者ではないようだ
『ねえ、Little Red Hood。』
「ん?どうしたの、ウインディちゃん。」
『ウインディちゃん……まあいいや。Little Red Hoodって所謂アバター名だろ、君の本当の名前は何ていうんだい?』
「えっと…私はね、なまえって名前だよ。」
…驚いた
僕らイグニスのパートナーではない無関係の人間がPlaymaker達と共にこのワールドに現れたから、どんな人間か見極めようと思っていたのに
まさかこうもあっさり自らの情報をさらけ出すなんて
『なまえ。…君、変わってるね。』
「え?」
『会って直ぐの相手に個人情報を晒すなんて、迂闊以外の何者でもないんじゃない?』
此方は至極真っ当な意見を述べている筈なのに、彼女…なまえは目を細めると僕に向かって無邪気に笑い掛ける
「だって、ウインディちゃんはAiちゃんや不霊夢ちゃんの友達でしょ?だから悪い子じゃないかなって。」
『うーん、僕はアイツらを友達と思った事はないんだけど。』
人間が変わっているのか、彼女…なまえが変わっているのか
きっと後者なんだろうな
勝手にそう結論付けていると突然一部の空が暗くなり始め、それが見えたのとほぼ同時にしゃがみこんでいたなまえがおもむろに立ち上がる
「…ウインディちゃん。何だか嫌な感じがしない?」
『そう?僕にはわからないな。』
あの場所で何が起きているのかは勿論知っているけど、彼女に教える事はしない
僕にも目的があるからね
でも…
『気になるなら行けば?なまえを止める権利なんてもの、僕にはないからさ。』
「ありがとう、ウインディちゃん。」
…どうしてかな、なまえが笑うと何だか気分がいい
人間なんて信用するに値しないと思っていたのに、どうしてこんな事を考えてしまうんだろうな
そんな事を考えながら、おそらくPlaymakerの事を追っていったと思われる彼女の姿を僕とエコーはただその場から見つめていた
僅かながら興味深い対象
―――――
怪しさ満点のウインディ。