08


「なまえ、今日はもう無理だ。」

「……。」

「諦めろ。」

「…もう少しだけ、待ちたい。」


そう言って窓ガラスの前に座り込んで外を見やるなまえに対し、私は気付かれぬよう溜め息を吐く



彼女を保護してから時間が経ち、私だけではなく少しずつだが三騎士達とも会話が出来るようになってきたなまえ

その会話の中でいつ耳にしたのかはわからないが、なまえはスターダスト・ロードの事を知ったらしい


そしてスターダスト・ロードに興味を持ったなまえはここ数日の間ずっと窓際でその光景を待ち続け、次の日を迎える…といった事を続けていた


正直早朝に窓際で倒れるように眠っているなまえを見る度、心臓に悪いと言いたくなるが真剣な眼差しでスターダスト・ロードを待っているなまえを見ているとどうにも告げる気は失せてしまっていた



「なまえ。何故、そこまでしてスターダスト・ロードを見たいと思う。」


頻繁に見られる現象ではないとはいえ、急がずともいつかは見られるものだ

どうしてそこまで見たいと考えるのか



「…綺麗だって、言ってた。」

「スターダスト・ロードの事か。」


私が尋ねると頷くなまえ


「ずっと…自由に見たり、聞いたりする事が出来なくて。だから今、出来る事…やってみたいと思った。」



過去を思い出しているのか彼女は一瞬悲しげに目を伏せた後、再度外へと視線を向ける

やはりなまえには何か訳があるようだが、無理に聞き出して再び警戒されては元も子もない


そう結論付けると私はキッチンへ向かい、ホットミルクを作ってくるとそのままそれを彼女へと手渡す



「これ…」

「ホットミルクだ。体が温まる。」

「…寝ないの?」

「お前を見ていると、私も久しぶりにスターダスト・ロードを見たくなった。たまにはそういう日があってもいいだろう。」



そう言って隣に座り込んだ私をなまえは不思議そうに眺める

私自身、何故そんな言葉が口をついて出たのかはよくわからない


「スターダスト・ロードを見られるといいな。」

「…うん。」



それでも隣でスターダスト・ロードの光景を待ち焦がれるなまえを見ると、その考えに至った経緯の思考すらどうでも良くなってくる気がしてくる

しかしその反面、先程彼女が見せた悲しげな顔が頭の中をちらついて仕方ない


安心したようにホットミルクに口をつけるなまえに対し、私は何故か無意識に彼女の頭を撫でていた


垣間見えた過去

―――――
スターダスト・ロード、綺麗でしたね。


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