07
なまえと共に買い物へ出てから3日程が経過しただろうか
あれから徐々に心を許してきたのか、なまえは私に対して怯えた表情を見せる事は少なくなっていた
そして今日、私や父を気に掛けて三騎士のバイラやファウストが訪ねてきた際に偶然、部屋から出てきたなまえと鉢合わせたのだが
見知らぬ人間を見て無論なまえは部屋へと逃げ込み、彼等は見知らぬ少女がいる事に驚く
勝手に素性の知れない人間を保護した事を咎められるとばかり考えていたのだが、彼等は私を非難する事なく自分が正しいと思った事をすればいいと言ってくれた
「貴女、名前は?」
「……。」
「私達は彼の知り合いなの。怪しい者ではないわ。」
「……なまえ。」
「そう、なまえ。いい名前ね。」
その上バイラはなまえの境遇を知り、少しでも彼女に寄り添おうと私の背後に隠れた彼女に対し幾度となく会話を重ね
ファウストも独自のルートでなまえの事を調べると申し出てくれた
「なまえの事、ありがとうございます。」
「いいのよ。帰る場所が無いと言ってたみたいだけどそれでもあの子を探してる人はいるでしょうし、早く素性がわかって家族や身内に帰してあげられるといいわね。」
「…帰す……」
なまえの素性がわかれば私が保護する理由はない
もし家族や身内がいるのならば尚更その必要もなく、帰すのは当然のこと
しかし頭では理解しているのに何故かその事を考えると胸の奥が痛むような、そんな感覚に陥る
「…難しい顔をしているようだが、どうかしたか?」
「いえ…何でもありません。」
余程難しい顔をしていたのだろう、ファウストが怪訝な顔をしながら尋ねてくるが私は首を横へ振り否を表す
「…たかが、僅かな時間を共に過ごしただけだろう。」
私自身も理解出来ずにいるこの不可解な感情を彼等に吐露出来る筈もない
ようやく私から離れたものの彼等に対し未だ警戒した小動物のような挙動を見せるなまえを遠目から眺めつつ、私は小さく呟いた
不可解な感情
―――――
この3人が揃うと家族にしか見えません。