06


それから暫くして試着室から出てきたなまえは淡い色の女性らしいワンピースを着用していたのだが

他の人間の視線が気になるのか、はたまた着なれない服に落ち着かないのか緊張した面持ちで試着室のカーテンを半分程引っ張り身体を隠していた


そんななまえを何とか試着室から引っ張り出し、彼女が着用している服をそのまま着させていきたいと告げれば店員は快く応じる

そして幾つかの服や靴の購入を済ませて店を後にした所、なまえは私の服の裾を軽く引っ張って私を呼び止める



「あ、あの……服、ありがとう。」


…驚いた

今まで頷くか必要最低限の言葉しか発しなかったなまえがまさか、感謝の言葉を紡ぐとは


「別に礼を言われる程の事はしていない。」

「…でも、ありがとう。」



再び感謝の言葉を紡ぎ出すなまえを伴い街中を抜けようとした所、彼女が初めて自らの意思で立ち止まった

どうかしたのかと立ち止まった先を見やればそこには移動販売式のソフトクリーム店があり、なまえがその店に興味を持った事が一目でわかった



「ソフトクリームが食べたいのか?」

「ソフト、クリーム?」


見た事も聞いた事もないのか、不思議そうに首を傾げるなまえ

そこで私はソフトクリームを1つ購入し、彼女へと差し出した



「ほら、これがソフトクリームだ。」


なまえは差し出されたソフトクリームを受け取るとおそるおそる口をつける

するとソフトクリームの冷たさに一瞬驚いた表情を見せたものの、その甘さを気に入ったのか少しずつ食べ進めていく


「うまいか?」

「…うん!」



ああ、そういう顔も出来るのか

私が尋ねるとなまえは小さく頷きながら笑顔を見せる


初めて見せた年相応の、屈託ない笑顔

ずっと怯えた表情を見せていた彼女がようやく心を開いたようで少しだけ、安心する



なまえが笑顔を見せた瞬間、一瞬だけだが自身の口元が少し緩んだ事に気付く


何故自分の口元が緩んだのか全く理解は出来ないが、今は深く考える必要もないだろう

嬉しそうにソフトクリームを食すなまえを見やりつつ、私は自分自身を勝手に納得させていた


初めての感謝、初めての笑顔

―――――
服の描写が壊滅的ですみません。あまり興味ないんです。


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