04


なまえと名乗る少女を自宅に連れ帰ってから早数日

空いている一室をなまえに貸し与えて生活を共にし始めたもののまだ警戒は完全に解けているとは言えず、約1メートル程の距離は取られている


まるで手負いの小さな野性動物の世話をしているようだ

そんな事を考えながら私はネットワーク上でなまえの事を調べ始める


だが名前と容姿、たったそれだけの情報で調べるのは困難を極め

なかなか進展が見られないのが現状だった



「…他に鍵となり得そうな物はこのデッキ位か。」



私が今預かっているこのデッキはなまえの唯一の私物とも言える物で

今では珍しいデータ化されていないデッキで、少女を保護した際にポケットへ入っていた物だった


なまえに尋ねるとこれは自分の物で、構築も自らが行ったものらしい

中を確認した所かなり考えて作り上げた事がよくわかる、完成度の高いデッキだ


しかし何か理由があるのか、なまえはデッキに一切触れようとしない

その上デュエルが嫌だという


デッキを所持しているのにデュエルが嫌だと言うのも奇妙な話だ



「…そういえば、奇妙な事は他にもあった。」



少女の身分を明らかにしようとこれまでに幾つか質問を重ねていたのだが、どうやらなまえは特殊な環境下に置かれていたようだ


簡単な読み書きは出来るものの学校へ通った事はなく、外に出た事もほとんど無かったらしい

勿論電脳世界の事等は知らず、それどころか電子レンジや掃除機といった簡単な機械にも触れるのが初めてのようだった



「…一体、今まで何処でどんな生活を送っていたのか。」


コンピューターの画面から視線を外し、後方で座り込んでいるなまえを見やればクッションで顔を半分隠しながら此方の様子を窺っている

その表情は半分しかわからないものの、どうやらコンピューターやネットワークといったものに興味を抱いたようだ



「なまえ、興味があるなら教えてやろう。」


私がそう告げれば1メートルの距離感を保ったまま少しだけ近付いてくるなまえ


何とも奇妙な共同生活だ

小さな野性動物のように此方の様子を窺うなまえに対し、私は小さく苦笑を溢したのだった


奇妙な共同生活

―――――
まだ警戒してるので無口ですが、今後はもう少し喋らせる予定です。


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