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『なまえ。此処がリンクヴレインズの中心地、セントラルステーションだ。』
「りょうけ……ううん、リボルバー。何か凄く広くて、大きくて…まるで、現実世界にいるみたい。」
『まずは仮想空間に慣れるのが良いだろう。自由に動いてみるといい。』
「うん。」
デバイスから発せられる私の言葉を皮切りに、物珍しそうな表情を浮かべながらリンクヴレインズ内を歩き始めるなまえ
本当ならばなまえの隣に並びこの空間内での事を全て教えてやりたかったのだが、リンクヴレインズ内での私は『ハノイの騎士のリボルバー』であり
期せずしてアバターの姿が白を基調とした衣服を身に纏っているなまえが私と共にいる事でハノイの騎士の一員と見なされるのを防ぐ為、デバイスからなまえに物事を教えるという苦肉の策に打って出たのだ
「広いし、色々なものや建物があって、何処に行けばいいのか……っ、わ!」
『どうした、なまえ!』
「おっと!お前、気を付けて歩けよー。」
なまえに何かあったのではないかと思ったものの、どうやら周囲を見渡していた中で人にぶつかったようだった
「…ん?さてはお前、初めてリンクヴレインズに来たんだろ?」
「あ、えっと…」
「いやあわかるぜ、色々と見て回っちまうんだよな!此処以外にも違うエリアもあるし、今はスピードデュエルってのも流行っててさー…」
まるで壊れたスピーカーのようにひたすら喋り続けるこのプレイヤーの名はどうやらブレイヴ・マックスというらしく
驚いたなまえが閉口しているのにも関わらず、ただひたすら自らの浅い知識をひけらかすように言葉を連ねている姿は最早苛立ちを通り越して滑稽でもあった
「…そうだ!お前、名前は?」
「え、えっと……なまえ。」
「よーし、なまえ。此処に来たのが初めてだって言うならまだデュエルもしてないだろ?俺が相手になってやるよ。あー、勿論互いに手加減は無しだぜ。リンクヴレインズでのいろはっつーもんを俺様が教えてやるからさあ。」
その自信が一体何処からくるのか知る由もないが、どうやらこの男はなまえとのデュエルを望んでいるらしい
突然のデュエルの申し出にどうするべきか迷っているなまえに対し、私はそっとデバイスから尋ね掛ける
『なまえ。此処ではデュエルで賭け事に興じる者やお前を傷付けようとする者はいない。勿論、このデュエルを受けるも受けないのもお前の自由だ。』
「リボルバー……私、やってみる。そうしたら、きっと…何かが変われる気がするから。」
デュエルを行う決心がついたのかブレイヴ・マックスへと向き直り、律儀に頭を下げるなまえ
「…さて。これが吉と出るか、凶と出るか。」
この経験がなまえ自身に対する大きな一歩になる事を私は願わずにいられなかったのだった
その決闘は変化をもたらす事が出来るか
―――――
次はデュエル描写が入ります。