03


少女を連れて自宅へと戻ったものの、見ず知らずの私を警戒しているのか少女は玄関から動こうとはしない

敵意がない事を伝えれば少しは警戒心を解いたのか、少女はようやく玄関から離れた



その後全身ずぶ濡れだった少女を何とか風呂に入れさせ、粥やホットミルクといった温かくて軽い食事を眼前に並べる

だがやはり警戒しているのか少ししか口にしなかったものの、少量でも食事を取った事に何故か私は安堵の息を漏らしていた



食事を終え暫くした後少女が何処の誰かを知る為、私はソファに膝を抱えて座っている少女へと向き直る


「私は鴻上了見。お前の名は?」

「……。」


少女は私を警察かもしくは法に触れるような人間だと思っているのだろうか、不安気な瞳で此方を窺っている



「安心しろ。名前を聞いた所で何処かへ通報するつもりは一切ない。ましてや、危害を加える気も毛頭ない。」


その言葉を告げてからおよそ1分後、少女がようやく口を開いた



「…なまえ。」

「なまえだな。なまえ、お前はこの街の人間か?」

「…違う。」



Dencity内の人間ではないという事か

では何故、なまえと名乗る少女はあの場所にいたのだろうか



「ならばお前は何処から来た?どうしてこの街に、ましてやあの場所にいた理由はなんだ。」

「……。」



この質問には答えたくないのか黙り込む少女、なまえ

警戒されている今、同じ質問をするのは得策ではないだろう



「…質問を変えよう。帰る場所がないと頷いていたが、他に行く当てはあるのか。」

「……ない。」



やはり家出か何かなのか


本来は然るべき場所へ連れて行くのが妥当だと頭では理解している

しかしなまえの瞳を見ているとその双眼には何処か見覚えがあり、どうしても放っておく事が出来ない



「…ああ、そうか。」



父と3人の助手が引き起こしたロスト事件

その拐われた子供達の孤独感や絶望、怯えに染まった瞳となまえの瞳がよく似ていたのだ



「帰る場所がないなら、此処にいればいい。」



これはあの時、直ぐに子供達の助けを呼ぶ事が出来なかった自分自身の罪滅ぼしと指摘されても返す言葉がない


「なまえ。此処をお前の居場所にすればいい。」



無意識に口走った言葉に私自身も驚いたが、それ以上に驚いたのはなまえだったようで

なまえは何度も瞬きを繰り返して驚いていたものの、暫くして小さく頷いたのだった


幼少期の罪滅ぼし

―――――
本当は彼、いい子ですよね。


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