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「ただいま、了見。」

「ああ。おかえり、なまえ。…今日もあの少女と会ってきたのか?」

「うん。」



私の言葉の意図を読み解いていないなまえは疑問に思う事もなく、首を縦へと振って頷く


なまえは以前公園で出会った財前葵と親しくなったようで、あれから時間が合う時に待ち合わせと称して稀に会っているようだ


だが、SOLテクノロジー内に身内がいる人間がいる者となまえが親しくなるのは多少なりともリスクを伴う

財前葵がどんな目的を持ってなまえと接しているのか悩み所ではあったが、どうやら彼女はなまえの事を一人の友として接しているらしい

身辺を調べてみてもSOLに情報等を流している様子は全く見受けられなかった


そしてなまえ自身、友と呼べる存在が出来た事が嬉しかったのか笑顔が少し増えたようにも思える



「了見。葵…自分には兄がいるって言ってた。でも、血は繋がってない。初めは他人だったって。」

「そうか。」


それは知っている

SOLテクノロジーのセキュリティ部長である財前晃と財前葵は義兄妹である事を



「血が繋がってないのに家族なら…私と了見も家族、なの?」


なまえのその台詞に対して私は言葉を詰まらせてしまう

何故なら私は既になまえの事を家族としてではなく、好意を抱く一人の人間として見ていたのだから



「了見?」

「そうだな、私となまえは家族のようなものだ。…今はな。」

「家族のよう?今は?」

「いや、気にするな。それより食事にしよう。今日はなまえの好きなアイスクリームを買ってきたんだ。食べるだろう?」

「……!うん!」



アイスクリームという単語を耳にした瞬間、先程までの怪訝な表情は何処へやら

なまえは嬉しそうに頷きながらキッチンへと向かう私の後を付いてくる


ようやく人並みの暮らしを経て、親愛や友愛といった情を得る事が出来たばかりのなまえに恋愛といった情を伝える事は時期尚早だろう

…いずれ、伝えたいものだがな


そう心に留め、私はなまえにアイスクリームを差し出したのだった


今は『まだ』家族として

―――――
親愛は家族、友愛は友人に対する情だそうですね。


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