31.5
その日は丁度テスト期間で、学校が午前中で終わりの日だった
そのまま真っ直ぐ自宅へ帰っても良かったんだけどあまりにも良い天気だったから少し、寄り道したくなって私は公園へと足を踏み入れた
昼休憩中のサラリーマンや幼い子供を連れた母親等があちらこちらに見受けられる中、私の視線は一人の少女へと止まる
私と同じか少し下にも見えるその子は一人でブランコに腰掛けたまま何をする事もなく、ただそこにいる
学校は?友達は?…家族は?
色々な疑問が頭の中を駆け巡る中もう一度その子に視線を向けた所、何だかその顔が寂しそうに見えて
「あなた、一人なの?家族や…友達は?」
いつの間にか私はその子に声を掛けていた
「……。」
「急にごめんなさい。あなたの事…何だか放っておけなくて、つい声を掛けてしまったの。あなたの名前は?」
「………なまえ。」
「なまえね。私は葵、財前葵よ。さっきの質問だけど、家族や友達は…」
「…いない。」
「そう…。」
最初は黙ったままだったその少女…なまえはまだ完全に警戒心は解けていないものの根気よく会話を続けた所、少しずつ自分の事を話してくれた
別の街からこの街へとやってきた事
これまで家族や友達と呼べる人間はいなかった事
今は優しい人が自分の面倒を見てくれている事
そんな事をなまえは話してくれた
「実はね、私も別の街から来たの。両親は既にいなくて、家族はお兄様だけ。…少し、なまえと似てるわね。」
「…お兄様?」
「そう、お兄様。私の大切な、たった一人の家族よ。」
「家族…。……家族って、一緒にいたいと思う人のこと?」
「それは…どうかしら。そうかもしれないし、もしかしたら家族愛とは別のものかもしれないわ。」
「…?」
不思議そうに首を傾げるなまえが何だか可愛らしいと思った瞬間、公園の入口から誰かが彼女の名を呼んでいる
きっとあの人がさっき話していた、面倒を見てくれている優しい人なんだろう
「…あの……私、もう帰る…」
「そうなの。じゃあまた今度一緒にお話ししましょう、なまえ。」
「……うん!」
そう言ってなまえは小さく頷き、迎えに来た男の人と一緒に帰っていく
もしかしたらなまえはDencityで出来た、初めての友達かもしれない
そう考えると何だか少し嬉しくて、その日の夜はお兄様に何か良い事でもあったのかと尋ねられたのだった
初めての友達
―――――
一応、主人公は恋愛と家族愛の区別がまだついてません。