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「…此処か。」
私がなまえを探す為に街中を奔走しておよそ1時間後
監視カメラの隅になまえと思われる少女が映っていたとスペクターから連絡があり、私は監視カメラの先にある路地へと足を運んでいた
その路地は薄暗い上に人が通る事もほとんどなく、あまりいい噂を聞かないような人間が集まる溜まり場だと耳にした事がある
なまえの無事を願いながら辺りを探し始めた所奥から人の声が聞こえてきた為、私は急いで其方へと向かう
「おら、こっちに来い!」
「や…っ!」
そこにはまるで絵に描いたような典型的な不良が一人の小さな少女の腕を引っ張っていて
その少女がずっと探していたなまえだという事は遠目からでもわかった
「…私の連れに何をしている。」
引きずってでも連れて行こうとする不良に私の怒りは頂点に達し、なまえを掴んでいるその腕をへし折らんばかりの力で眼前の男の腕を掴み取る
そこでようやく私の怒りを買った事に気付いたのだろう
その不良は情けない声を上げながら一目散に逃げていった
「此処にいたら危険だ。帰ろう、なまえ。」
そう言って手を伸ばすもののなまえは私の手を取る事はなく、左右に首を振るばかり
自らの言葉がこれ程までになまえを傷付けていた事を思い知らされ、後悔の二文字が頭をよぎる
「すまなかった、なまえ。お前を大切に想っているが故にお前自身の気持ちを考えず、独りよがりな考えを持つに至ってしまった。」
「……。」
「許してくれとは言わない。だがなまえ。お前を此処に一人で残していく事等、私には出来ない。どんな怒声も怨嗟の声も受け止める。だから…」
一緒に帰ろう、なまえ
もう一度、そう告げて手を差し出すと堰を切ったように大粒の涙を零しながら泣き出すなまえ
見知らぬ人間に腕を掴まれ恐怖したのだろう、なまえは震える手で私の服を弱々しく握りしめる
「なまえ…本当にすまなかった。もうお前に怖い思いをさせたりしない。…ずっと、傍にいる。」
…そうだ、もう二度とこの小さな少女を手離そうなどと考えたりはしない
むせび泣くなまえを抱きしめながら、私は心の中で決して破らぬ誓いを立てたのだった
一緒に帰ろう
―――――
悩んだ結果、此方のお話にしました。