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「…さて、どうしたものかな。」


平日の昼下がり、イルカのぬいぐるみを抱えソファで静かな寝息を立てて眠っているなまえを眺めながら私は無意識に呟く



なまえが私と共に過ごすようになり、かなりの時間が経った

警戒心が剥き出しの状態だった初対面の頃に比べたら私自身は勿論、常人と変わらない生活を送る事にも随分慣れてきたように思う

勿論、それは本来良い事だと頭では理解している


しかしなまえは私がハノイの騎士のリーダーであるリボルバーだと、ネット世界の犯罪者という事は知らない


いつかなまえがこの事実を知った時

または彼女がリボルバーに近しい人物だと誰かに知られた時、きっと多大な迷惑が掛かるだろう


そうなる前になまえを我が子のように受け入れてくれる人間を探すべきか考える反面、なまえの出自から鑑みてあまり世間に晒すべきではないのかと二つの考えが交錯し、私は結論を出せずにいた



「了見様、どうかしましたか?」

「…ああ。なまえの事で少し、な。」


自分がどうするべきなのか思考が行き詰まった矢先、ネット世界ではスペクターとして行動している馴染みの人間に声を掛けられる



「…なるほど。了見様は彼女に新たな家族を与えるべきか、それとも自らの手元に置いておくか。どちらかで迷っておられるのですね。」

「なまえの出自やデュエルの腕を考えれば不用意に世間に晒すのは得策とは言えないだろう。だが我々の事で万が一があった場合、なまえを此処から離しておく方が……」



そうして言葉を続けようとした瞬間、背後から射るような視線を感じる


驚いて振り返ればそこには眠っていた筈のなまえが起きていて

その表情は怒っているような今にも泣き出しそうな、様々な感情が入り交じった表情を浮かべていた



「…了見、前に此処を私の居場所にしていいって。そう言ったのに。」

「なまえ、今話していた事は決定事項ではない。ただお前の今後を考えて…」


「今後、じゃダメ。…私は今、此処にいたい。なのに…なんで了見はわかってくれないの?」

「なまえ、私は…」

「了見の…バカ!」



ただ一言、なまえはそう言ってぬいぐるみを抱えたまま此処を飛び出して行ってしまう



「なまえ…」


飛び出して行く直前のなまえは大粒の涙を零していて

彼女の意思をないがしろにしてまで進める話ではなかったと、今になって私は後悔に苛まれたのだった


遅かった後悔

―――――
スペクターの本名はいつわかりますか。


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