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「なまえ!」



なまえが私の傍から離れてもう随分と時間が経ったが、一向に彼女が見つかる気配はない


広場だけでなく街の中心部や入り組んだ細い路地、思い当たる箇所は全て探したがなまえの影も形も見えない

こうなると一度自宅に戻り、街中の監視カメラにハッキングを行ってなまえを探し出すのが最善の策ではないだろうか




「了見。」


そんな焦りが出始めていた私の背後から聞こえてくる、あどけなさを含んだ少女の声

急いで振り返るとそこには私がずっと探していたなまえの姿があった



「なまえ!今まで何処に…」

「あの……猫の家族、探してた。」

「猫?」


一体なまえは何を言っているのか

状況が全く飲み込めずにいる私になまえが少しずつ、事の顛末を話し始める



私と共に歩いていた時に偶然、首輪をした猫を見つけた事

その猫が飼われている猫だと理解したなまえは飼い主を見つけるべく、猫を抱えながら一生懸命街中を奔走していた事

後に飼い主は無事に見つかったがなまえ自身も街中をよく知らなかったが為に迷ってしまい、その飼い主に此処まで連れてきてもらった事を



「帰る場所…家族がいるなら、帰してあげたいって。そう思ったから飼い主、探してた。…了見、勝手な事してごめんなさい。」


おそらくなまえは私に叱られるとでも思っているのだろう

俯きがちになりながら不安気な表情を浮かべている



「なまえ。」

「……。」

「今後勝手にいなくならないと約束出来るなら、今回は許そう。」

「約束…」


その言葉に何を思ったのか

なまえは自身の手をまじまじと見つめた後、その小さな小指を私の小指にそっと絡ませる


「…約束。もう、勝手に了見の前からいなくならない。」



所謂、指切りといった子供騙しのような約束

それでもなまえが私の傍から勝手にいなくならないと、そう約束してくれた


たったそれだけの事が嬉しくて

私は無意識に口元を緩ませていたのだった


約束の指切り

―――――
やっぱり猫が好きなんです。


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