21
「なまえ。…珍しいな、まだ起きていないのか。」
ある休日の早朝、いつもなら既に起床してきている筈のなまえの姿が今日は見当たらない
珍しい事もあるものだと朝食の準備を整えた後、彼女を起こしに私は部屋へと向かった
「なまえ、朝食が出来……っ、なまえ!」
彼女を起こそうとベッドに近付いた所、なまえは熱があるのか赤い顔をしながら時折苦しげな咳をしている
今朝起きて来なかったのはこの所為だったのか
急いで私はなまえの額に濡れタオルを施し、彼女を起こさぬようそっと汗を拭ってやる
暫くして目が覚めたらしいなまえと視線が交わった
「…りょう、けん?」
「無理に起きなくていい。おそらく風邪を引いたんだろう。」
「風邪…」
自分の現状を理解したらしい彼女は何処か申し訳なさそうに眉を下げ、布団を顔の半分程まで被って表情を隠してしまう
「……ごめん、なさい。」
「何故、謝る必要がある。」
「だって、了見に迷惑…」
「体調を崩す位、誰にだってあるだろう。それに、迷惑だと思う理由がない。」
その言葉を耳にしたなまえは瞬きを数回繰り返した後、被っていた布団から少しだけ顔を出す
「…了見、ありがとう。」
「気にするな。それより何か食べたいもの、食べられるものはあるか?」
「食べたいもの…」
「何でもいい。」
「ソフトクリーム…食べたい。」
「本当に好きなんだな、ソフトクリームが。」
「だって…了見が買ってくれたソフトクリーム、おいしかったから…。」
頬を赤らめたまま小さくはにかむなまえの様子に対し鼓動が速まり、不覚にも了承しようとしてしまう
だが、なまえが所望しているソフトクリームでは風邪を引いた時に必要な栄養を取る事は難しいだろう
まずは卵粥やフルーツで栄養を取ってもらってから、ソフトクリームはその後だ
彼女に少しだけ待っているように伝えると私は卵粥を作る為、キッチンへと向かった
所望されたソフトクリーム
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了見を看病するかさせるかで迷った結果、看病させる方にしました。