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「なまえ、手持ち花火は此処を持つの。先端から火花が出るから、決して触っちゃ駄目よ。」

「もし、触ったら…?」

「火傷をする。絶対に止めなさい。」



次の日の夜

私達は太陽が沈み辺りが暗くなった自宅の前で、家庭用の手持ち花火に火を付けていた


本来は迷惑を掛けぬよう二人で細々と行うつもりだったが

なまえから時々了見と一緒にいる人達とも花火をしたいと告げられ、急遽スペクターや三騎士の皆にも集まってもらったのだ


突然の呼び出しにも関わらずまるで家族のように優しくなまえと接してくれる皆に対し、私は心中で感謝の言葉を述べていた



「しかし意外でした。了見様から花火のお誘いがあるとは。」



初めての花火へ少々不安気な顔を見せつつ興味深そうに眺めているなまえに対し、隣にいたスペクターがぽつりと呟く



「なまえの頼みとはいえ、面倒な事に巻き込んだという事は自負している。」

「いえいえ、面倒だとは一切思っていませんよ。私は家族というものをイマイチ理解出来ていませんが、彼女…なまえの事は妹のように思っていますから。」

「…妹、か。」



私はなまえの事を家族以上の気持ちを抱いているが、なまえは私の事をどう思っているのだろうか


以前出会ったかつての仲間の元ではなく今の居場所を選んだ事から、少なくとも嫌われてはいないのだろう

だが直接なまえに聞いた訳ではない為、私が彼女の気持ちを知り得る筈もなかった


そんな様々な事を悶々と考えていた中、今まで手持ち花火を楽しんでいたなまえが此方へとやって来るのが見える



「どうした、なまえ。」

「…あのね、次は線香花火っていう花火をするんだって。……折角だから、みんなでしたいと思って…。」



俯きがちに言葉を紡ぐなまえの背後では何処と無く嬉しそうな表情を浮かべながら三騎士達が此方を見ている



「折角のお誘いですし、参りましょう。了見様。」

「ああ。…そうだな。」



私は色々と考え過ぎていたんだろう


なまえがどう思っているか等、今は然したる問題ではない

なまえが心の底から楽しめていれば、今はそれで十分だ



「了見、早く。」

「わかったからそう急かすな。」



仲間達やなまえと過ごしたこの一時を私はきっと、忘れないだろう

線香花火の淡い光が夜の闇を照らす中自分自身でも気付かないまま、私は無意識に口元を緩ませていた


特別な夜の思い出

―――――
線香花火、好きです。


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