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「…あの、了見。」
「どうした、なまえ。」
とある日の夕食中、ふとなまえが私の名を呼んだ
なまえが控えめに私の名を呼ぶ時は尋ねたい事がある時だと、共に過ごしていた中で私は理解していた
「あの、ね……花火って…何?」
「…花火?」
「その…朝のニュースで、先週のお祭りがどうとか言ってて。その中で『花火が沢山上がった』とか何とか…」
今朝方のニュース内容を思い出しているのか、たどたどしい言葉ながら何とか内容を私に伝えようとしてくるなまえ
そういえば先週はこの街の夏祭りだったか
なまえが特に興味を示さなかった為、連れて行く事はしなかったのだが…
「了見、花火は空に上がるものなの?」
此方へ向けられる純粋ななまえの瞳が私を捉える
…まさか夏祭りを終えてから興味を抱かれるとは思ってもみなかった
「いや、空に上がるものだけではない。打ち上げる種類とは別に、手に持って楽しむ花火も存在している。」
「花火を…手に持つ?」
やはり見た事のないものを想像するのは難しいのだろう
食事をしていた彼女の手が完全に止まってしまった
「なまえ。」
「……?」
「花火をしてみたいか。」
夏祭りが終わった今、打ち上げ花火を見せてやる事は叶わないが手持ち花火を経験させてやる事は出来る
そう考えてなまえに尋ねた所彼女は少しだけ、それでも嬉しそうに頷く
明日はなまえの為だけの花火大会を開いてやろう
眼前の嬉しそうななまえを見つめながら私は一人、小さく決意していた
彼女が喜んでくれるなら
―――――
夏と言えば花火かな、と。