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「了見、これは何?」
「これはジンベエザメだ。」
「…魚族?」
「違う。」
ポスターを見て興味を抱いたなまえと水族館に来てみたのだが、やはりなまえはデュエル以外の事を何も知らないらしい
展示されている魚やクラゲを見てこれは魚族か、はたまた水族かと何度も私に尋ねてくる
その度に訂正していた為楽しめているのか些か不安に思ったものの、それはいらぬ心配だったようで
なまえは興味津々な様子で展示されている魚達を目で追っていた
その後これからイルカショーが始まるとのアナウンスが入り、私となまえも屋外のステージへと向かう
初めて見るイルカや迫力あるショーの演目に最初は驚いて私の服を掴んでいたなまえだったが、次第に慣れてきたのか終盤には僅かながら笑顔を見せるようになっていたのだった
「…イルカ、可愛かった。これも、ありがとう。」
「そうか、良かったな。」
ショーが終わり多くの人々が館内へと戻る中、余程イルカが気に入ったのだろう
なまえは売店で売られている大きなイルカのぬいぐるみを見つめたまま、未だに動く気配がない
そこでそのぬいぐるみを購入しなまえに渡した所、彼女は今までで一番と言っていい程の笑顔を浮かべながらぬいぐるみを受け取って抱きしめる
その嬉しそうな笑顔を見られただけで、水族館へ来た価値はあっただろう
そんな事を考えながら自宅へ帰ろうと水族館を出た瞬間、見知らぬ青年がなまえの腕を掴んでいた
「なまえ…なまえだよな!?」
「あ…」
「やっぱり!ずっと探してたんだ!」
満面の笑みを浮かべて掴んだままのなまえの腕を上下する相手の様子は見ててあまりいい気分ではない
一体この青年は誰なのか
「なまえ、彼は…」
「……同じ施設にいた、仲間。」
一言それだけを告げ、顔を俯かせるなまえ
だが嬉しそうに笑う相手の青年と対照的になまえは未だ顔を俯かせたままだ
両者の間に一体何があったのか
部外者である私はなまえとその青年を眺める事しか出来なかった
過去の来訪
―――――
ジンベエザメ、好きなんです。