15


「了見。洗濯物、此処に置くよ。」

「……。」

「了見?」

「……ああ、洗濯物だな。其処に置いてくれ。」

「具合、悪いの?」

「いや…大丈夫だ、気にするな。」



なまえが単独で買い物に出掛けた日から数日が経ち、なまえ自身も以前に比べて出来る事も多くなってきた


本来喜ばしいこの事を素直に喜んでやれずにいるのはあの日、なまえに手を貸した男達の存在が気になっていたからだった



親切心からだったのか、はたまた邪な考えがあったのか

それすらわからない人物相手に気を揉む等、我ながら単純な思考回路をしていると自嘲してしまいそうになる


そんな中で本日何度目かわからない溜め息を吐いていた所、ふと背中辺りに何かの温もりを感じる

驚いて後ろを振り返るとなまえが細い腕を伸ばし、私の背に抱き付いていた



「なまえ…何をしている?」

「了見…何だか元気が無さそうだったから。…こうしたら元気、出るかと思って。」



心配そうに此方を見つめるなまえの大きな瞳には、何処か難しい顔をした私の姿が映し出されている

…なまえを心配させたくなかった為表情に出さないよう努めていたつもりだったが、まさかこれ程わかりやすく表情に出ていたとは思わなかった



「…やっぱり元気、出ない?」



私が何も答えていない所為か、未だ不安気な表情を覗かせながら尋ねてくるなまえ

…見知らぬ人物を気にして彼女を心配させる等、一体私は何をやっているのか



「…ありがとう、なまえ。もう大丈夫だ。」

「元気、出た?」

「ああ。」



此方が頷けばなまえは安心したように小さく表情を緩ませる

初対面の時と比べて表情が豊かになっただけでなく、他人を気に掛ける余裕も出てきたように思える


…もしかしたら何れ、なまえも私の傍を離れていく日が来るのかもしれない

それでも、そんな日が来るまでは私がなまえの傍にいて、彼女を守ろう


年不相応の幼さが垣間見える笑顔を浮かべているなまえを見つつ、私は人知れず心に誓った


誰も知らぬ心の誓い

―――――
意外と了見、顔に出るタイプかなと思ったので。


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