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「……遅い。」
太陽が沈み掛け周囲が橙色に染まり始めた中、私は何度も時計を見ながら小さく息を吐く
三騎士達からなまえはもう一人でも買い物が出来る、世間慣れさせるべきだと告げられ彼女に簡単な買い物を頼んだのがおよそ3時間程前
1時間もあれば帰ってくる計算だったのに、いつまで経ってもなまえは帰ってこない
迷う程複雑な道ではないし何より一度、その店へは私と共に足を運んでいる
…まさか、何かの事件や事故に巻き込まれいるのではないか
頭の片隅にそんな考えが浮かんだ瞬間、玄関の扉が開く音が聞こえてきた
「た、ただいま。」
急いで玄関へ向かうとそこには行きと変わらぬ姿のなまえが立っていて
事件や事故に巻き込まれたのではないと安堵し、私は大きく息を吐く
「……?買い忘れ、してないけど…。」
「いや…そうじゃない。いつまで経っても帰って来なかったから少し、心配だっただけだ。」
「心配…」
「何故、直ぐに帰って来なかった。店の場所がわからなかったのか?」
すると彼女は首を横へ振り、少しずつ真相を語りだす
私に頼まれた買い物を終え帰ろうとした所、彼女は何処かに財布を落としてしまったらしい
そしてその財布をあちこち探し回っていてこんな時間になってしまったという事だった
「…でも、一緒に探してくれた男の人がいた。その人達が、送ってくれた。」
「……送る?」
「車で。」
さも当たり前のように告げるなまえ
他人と接する事に慣れていないなまえが見知らぬ人間に付いていく事等有り得ないと思っていただけに、今の言動には驚きを隠せない
「なまえ、知らない人間に付いていくのは危険だ。もうしてはいけない。」
「…でも、怖い人じゃなかった。雰囲気も少しだけ、了見に似てる気がして…」
…私に雰囲気が似ている?
だから彼女は警戒する事なくその人物達に僅かながら心を許したというのか
しかし今回は大事に至らなかったから良かったものの、次に同じような事があった場合無事に済むとは限らない
「とにかく、知らない人間には付いていっては駄目だ。いいな。」
「…わかった。」
私の言葉に対しなまえは少しだけ残念そうな表情を浮かべると此方に袋を手渡し、部屋へと戻っていく
…どうして今、彼女は残念な顔をしたのだろうか
また、その男達に会いたいという事なのか
心の隅に何とも言えないわだかまりを覚えつつ、私はなまえの背中を見つめる事しか出来なかった
心の隅のわだかまり
―――――
主人公に手を貸した人間が気になる了見。