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「…なまえ。」
広場で意識を失ったなまえを何とか自宅へと連れ帰ったものの、未だに意識が戻らないのか目を覚ます様子はない
そして、倒れ込む直前に呟いていた『怖い』という言葉
今まで後回しにしてきたが、やはり早急になまえの過去を調べる必要がありそうだ
抱き抱えた彼女を貸し与えた部屋のベッドに寝かせ、私はそっとその場を後にした
「……そう簡単には見つからないか。」
なまえを連れ帰ってから5時間程経っただろうか
あれからネット上のあらゆる情報を探してはいるものの、これといって有力な情報が見つかる気配はない
やはり彼女の名前と容姿だけで過去を調べるのは無謀だったのか
そう考えていた最中、画面上の片隅に数ヶ月前に世間を騒がせていたとあるネット画像を見つけた
「…ああ、そういえばこんな事件もあったな。」
それは莫大な金額を賭けて行われている違法な賭けデュエルの施設があるというネット上での情報で
嘘か誠か様々な憶測が流れる中で件の施設が建物火災を起こすと真相が明るみになり、関係者全てが逮捕されたという事件だった
だが、この事件はなまえとは無関係だろう
そう考えて表示されていた画像を消去しようとしたまさにその瞬間、私の視線はある1つの画像へ釘付けになる
「これは…」
その画像は火災以前の施設内を写した画像のようだったが、そこには目元以外を仮面で隠された少女が写っていて
その少女の瞳は恐怖や悲しみ、絶望といった色を灯している
だが、私にはその瞳の持ち主が誰なのかを瞬時に理解してしまった
たった1枚の画像データだが、間違える筈がない
「……なまえ?」
気付くと私は無意識に彼女の名前を呟いていたのだった
過去の記録
―――――
過去話、重くなるかもしれません。