09


「…此処が、広場?」

「そうだ。」


休日で賑わいを見せる広場に着いたなまえは物珍しそうに辺りを見渡している


私が保護してから時間が経ち、精神的にも大分落ち着いてきたなまえ

だが、それでもなまえはあまり外へは出たがらない

それでは今後の彼女の為にはならないだろうと三騎士に後押しされ、今日は広場にと連れてきたのだった



「前に行った場所より、人が多い。」

「元々人が多い場所だが、今日は休日だからな。…慣れないか?」

「…ちょっとだけ。」



その言葉を聞いて多少不安を覚えたものの、なまえは私の心配を余所に広場を我が物顔で歩いている鳩の後を興味深そうに付いていっている

あまり年相応とはいえない行動に思わず苦笑を浮かべてしまうが、なまえが楽しいのならそれでいいかと考え私はそのまま彼女の行動を見守っていた



それから時間が過ぎ、太陽が最も高い位置に来た昼時

私は鳩に餌をやっていたなまえへ問い掛ける


「なまえ。そろそろ昼時だが、何か食べたいものはあるか。」

「えっと……ソフトクリーム、食べたい。」

「…ソフトクリームが昼食代わりになる訳ないだろう。」


以前食したソフトクリームが大層気に入ったのだろう、あれから何かにつけてなまえはソフトクリームが食べたいと言っていた



「何か昼食になりそうなものを買ってくる。ソフトクリームはその後だ、いいな。」

「…ん。」


私がそう告げるとなまえは小さく頷きながら再び鳩に餌をやり始める


彼女を一人この場に残しておくのは少々不安はあったが、人が多い中でも落ち着いている今の状態ならきっと大丈夫だろう

一応この場から離れないようなまえに言い聞かせ、私は一度広場を後にした




「取り敢えず、これでいいだろう。」



数分後、広場から少し離れた店で購入したサンドイッチを手に持ちながら広場へと足を進める

ソフトクリームを販売している店も確認出来た為、サンドイッチを食べた後は約束通りソフトクリームを買ってやろう


そんな事を考えながら広場に足を踏み入れた所、先程よりも人が多く何やら騒がしい

よくよく見ると広場の中央でデュエルのパブリックビューイングをやっていて、その為に人が増えたのだと容易に推察出来た



「…なまえ?」


だが、その人混みの中になまえの姿が見当たらない

「なまえ、何処だ!?」


姿の見えない彼女を見つけようと人混みを掻き分けて周囲を探した所、広場から少し離れた細い路地に人影を発見する

近付いてみるとその人影はやはりなまえで、彼女はうずくまりながら小さく震えていた



「なまえ、何があった。」

「…っ、う……怖、い…」

「なまえ…?しっかりしろ、なまえ!」



広場から離れている間に一体、彼女に何があったのか

既に意識を失っているなまえを抱き抱えつつ、私達はパブリックビューイングで盛り上がっている広場を人知れず後にするのだった


刹那呟いた『怖い』の真意

―――――
長くなりました。


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