小さな嘘を纏って隠したこの想い
「遊作、こっちの作業は終わったよ。」
「ありがとう、なまえ。」
「手伝う?」
「いや、いい。」
そう言って私の幼馴染み、藤木遊作は再度コンピューターの画面へと向き直った
自分の復讐の為、そして草薙さんの弟の為に遊作はハノイの騎士を追っている
それは私も納得している、遊作が自分自身で決めた事だから
…それでも、本当は彼の復讐を止めたかった
私は遊作が好きだから
「なまえ、手が止まっているが…考え事か?」
「え?あ…ううん、何でもない。ちょっとぼーっとしてただけ。」
光に背を向け、振り向く事なく闇へと進んで行く遊作に向かって名を叫んだとしても、きっと彼は立ち止まる事等しないんだろう
復讐を終えるまでは
「…ごめんね、作業中断しちゃって。今日中には何とかするよ。」
「なまえ、無理はするな。」
「平気平気!私、体力だけは無駄にあるからさ。」
私の気持ちに気付いていない遊作の何気ない優しさが嬉しくもあり、少しだけ切なくなる
それでも、この想いは遊作が復讐を終えるまで心の奥底に隠しておこう
彼の邪魔だけはしたくないから
「だからこれからもちょっとした手伝い位はさせてよね、遊作。」
本心からの言葉と小さな嘘を纏いながら、私は遊作の傍にいる
いつか、彼が復讐を遂げるまで
小さな嘘を纏って隠したこの想い
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茨薔薇様リクエストの遊作夢、夢主が遊作に片想いしてるシリアス系の話でした。気に入って頂けたら嬉しいです。