いつかその双眼に映してくれれば、それでいい
「なまえ、その目はどうした。」
「え?」
「目が赤い。」
休日のある日
前日に勉強を教えてほしいと頼んできた友人のなまえを家へ招き入れたものの、気になった事をそのまま口に出してしまう
何故なら彼女の双眼は泣き腫らしたように赤くなり、心なしか瞼も腫れているような気がしたから
「……遊作くんは鋭いなあ。これでも結構冷やしてきたし、治まったと思ったんだけど。」
「…泣いたのか?」
そう尋ねるとばつが悪そうに小さく頷くなまえ
話を聞くと遠距離恋愛だった恋人と昨夜別れ、その事から暫く泣いていた為に目が赤いという事だった
「やっぱりなかなか会えないっていうのはツラいみたいでさ。私はまだ好きだから余計に悲しくなっちゃって……っ、ごめん。ちょっと涙出たけど大丈夫、大丈夫だから。」
昨夜大分泣いたとはいえ、気持ちの整理は早々につくものではないだろうに
ぽろぽろと流れ落ちる涙を拭いながらも気丈に振る舞うなまえ
そんな彼女が愛おしくて、守ってやりたくて
気付けば俺は彼女の涙を指で拭っていた
「…遊作くん?」
「なまえに相応しいヤツはきっと現れる。…だから、今は好きなだけ泣けばいい。」
「…っ、ありがと。優しいね、遊作くん。」
今、泣き腫らした双眼に映っているのはきっと別れた男の姿なんだろう
…でも、いつかその瞳に俺の姿を映してくれたなら
なまえの真っ赤な瞳を見つめながら俺はそっと彼女の髪を撫でた
いつかその双眼に映してくれれば、それでいい
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ましろ様リクエストの遊作夢、お題は『赤い瞳』での話でした。気に入って頂けたら嬉しいです。