無意識に向けていた嫉妬の矛先
「なまえ、何をしてるんだ。」
「これ?オンラインゲーム!ネット上で世界中の人と一緒にゲームが出来るんだー。遊作もやる?」
「興味ないな。」
「あらら、そりゃ残念。」
ある休日の午後
自宅へ遊びに来たなまえが何かしらの端末を持っていた為何をしているのか尋ねた所、なまえはオンラインゲームだと楽しそうに答える
それは今流行りのゲームらしく、タイトルを言われてみればクラスの中でも誰かが話題にしていたような気がした
「俺はやる事がある。ゲームをしててもいいが、あまり騒がしくするな。」
「はーい。」
わかってるのか、わかっていないのか
勢いよく手を上げるなまえを横目に見つつ、俺は自分のやるべき事をやる為に別室へと向かった
それから2時間は経っただろうか
自分のやる事が終わりなまえがいる部屋へ戻ってきたものの、なまえは未だゲームで遊んでいるようだった
「まだゲームをしてるのか、なまえ。」
「あっ、遊作。今ね、みんなで一緒のミッションをやってるんだ。楽しいよー。」
「…そうか。」
此方を向いて答えるなまえはとても楽しそうにゲームをしていて、心が何処となく悶々としてくるような気がする
それから30分後、再度なまえの方を見やるも相変わらず彼女は笑顔を浮かべながらゲームに勤しんでいる
だが今のなまえの楽しそうな表情を作っているのは顔も知らない、何処の誰かも知らない人間で
その事実を認識した瞬間何だかその何処の誰かも知らない人間に何とも言えない感情が沸いてきて、俺はなまえと背中合わせに座り込んだ
「遊作、どうかした?」
「……。」
「遊作?」
「………。」
黙ったままの俺に対し、なまえは何故か満面の笑みを浮かべると俺の首元に抱きついてくる
「なまえ?」
「えへへ、まさか遊作がゲームにヤキモチ焼くとは思わなかったからさあ。」
「ヤキモチ…」
ああ、そうか
この何とも言えない、渦巻くような感情は嫉妬だったのか
「すぐにわかってあげなくてごめんね遊作。ゲームは一旦中断、一緒に買い物行こっ。」
「…そうだな。」
まさか自分が見知らぬ人間、引いてはゲーム相手に嫉妬するとは思わなかった
なまえの前ではいつも冷静でいられると思っていたのに、自分もまだまだ未熟なようだ
外出を促しながら手を差し出してくるなまえに対し俺は気付かれないよう、小さく苦笑を浮かべたのだった
無意識に向けていた嫉妬の矛先
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ゆき様リクエストの遊作夢。ゲームに夢中な彼女にゲームに嫉妬する遊作夢でした。 気に入って頂けたら嬉しいです。