囁かれたのはカップケーキよりも甘い言葉


「ただいま。」

「お兄様、おかえりなさい。」


普段よりも少しだけ早く帰宅出来た私を妹の葵が出迎えてくれる

以前は私と葵の間に何処かすれ違いがあったように感じていたがPlaymakerとの一件からそのすれ違いは解消され、互いの距離が縮まったようにも思えた


「お兄様、今日はなまえが来てくれてるんです。」

「みょうじさんが?」


みょうじさんという子は葵と同じ学校に通う同級生の少女で

あの子が初めて自宅に招いた友達だった



「なまえ、お兄様が帰ってきたわ。」


「お久しぶりです、晃さん。それと、お邪魔してます。」

「いらっしゃい、みょうじさん。そんなにかしこまらないでくれ、君は葵の大切な友達なのだから。」


私がそう伝えるとはにかみながら小さく微笑む目の前の少女

その微笑みに思わず鼓動が速まってしまう



彼女に初めて会ったのはもう半年も前だったろうか


整った容姿に加え落ち着いた立ち振舞いと仕草、そして可憐な笑顔

その時から私は葵と同い年のこの少女…みょうじさんに一目惚れをしたのだと、自覚してしまった



「お兄様。私、お茶を入れてきますね。なまえと少し待ってて下さい。」


葵は私のそんな想いには気付いていないようで、キッチンに向かうとお茶の準備を始めている

恋心を抱いている相手と二人きりの状態に何とか心を落ち着かせようとしていた中、みょうじさんが鞄の中から何かを取り出して私に差し出してきた


「みょうじさん、これは…?」

「調理実習で作ったカップケーキです。晃さんさえ良かったら、貰ってくれませんか?」


差し出されたカップケーキは店頭で売っている物と遜色ない程の出来栄えで

ラッピングもそれは丁寧にされていた


「ありがとう、みょうじさん。だが…何故私に?」


彼女の手作りと聞けばクラスメイトの男子生徒達がこぞって欲しがるだろうと考え、何気なく理由を聞いてみる

するとみょうじさんは一瞬何か迷ったような表情を覗かせた後、少々顔を俯かせながら


「そ、その……晃さんに食べてもらいたくて、頑張って作ったので…」


そう、小さく呟いた

彼女にそう告げられて断る人間等、きっとこの世にそういないだろう


「本当にありがとう。大切に食べさせてもらうよ、みょうじさん。」


そう言ってカップケーキを受け取ると嬉しそうに頷く彼女


その姿が堪らなく愛しくて

思わずみょうじさんの髪に触れてしまったものの、彼女は微笑みながら『やっと触れてくれましたね』と告げながら悪戯っぽい笑顔を浮かべる


まさかここまでが彼女の描いた作戦だったとは

完敗の表情を浮かべる私と対称的に彼女…みょうじさんは満面の笑みを浮かべ、私の耳元で『ずっと好きでした』と

小さな声でそっと囁いたのだった


囁かれたのはカップケーキよりも甘い言葉

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真澄様リクエストの財前夢。葵と同級生の甘夢でした。 気に入って頂けたら嬉しいです。
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