名も知らぬ青年との恋の始まり
「もー、ハノイの騎士って何処にいるの!?全然見つからない!」
LINKVRAINS内にハノイの騎士、そしてPlaymakerが現れてからジャーナリストである私はずっとハノイの騎士を探している
他のジャーナリストはこぞってPlaymakerを追いかけているようだったが、私はハノイの騎士一直線だった
特に理由らしい理由はないんだけど、彼等が面白半分でLINKVRAINSを壊そうとしているなんて私には到底思えなくて
その理由を尋ねて記事にしたいと考えていたのに神出鬼没な彼等にはなかなか出会えず、ここ一週間はずっと空振りだった
「はあ…今日はもう帰ろうかな。」
今日も成果は得られずログアウトすると、開きっぱなしだったパソコンの画面に上司から記事の進捗具合を尋ねてくるメッセージがたくさん来ている
その量にげんなりした私は缶詰め状態で仕事に取り掛かるよりは気分転換になるだろうと幾つかの資料を抱え、ある場所に向かう為アパートを飛び出した
「はーあ、やっぱりここの海はキレイだなあ。」
アパートを飛び出した私がやってきたのは稀にスターダスト・ロードといった自然現象が見られる事で有名な公園で
昔から仕事に行き詰まった時や嫌な事があった時等によく訪れる、私にとってまさに癒しの空間だった
「それにしてもホント、ハノイの騎士って何処にいるんだろ。人数とかも全然わかってないし……っ、きゃ!」
「……っ!」
ハノイについて思考を巡らせていた所、どうやら私は前をよく見て歩いていなかったらしい
前方から歩いてきた青年と正面からぶつかってしまい、持っていた資料を盛大にぶちまけてしまった
「ご、ごめんなさい!私、全然前見てなくて…」
「いえ、此方こそ。」
その青年はぶつかった私を咎める事なく、それどころか散らばった資料を一つずつ拾ってくれている
…年は私より少し下くらい、かな?
凄く整った顔をしてるし、瞳も澄んだキレイな水色をしてるなあ
「ハノイの騎士…」
私がぼけっとその青年に見惚れていた所彼が呟いた言葉で我に返り、慌てて自分も資料をかき集め始める
「ジャーナリスト、ですか。」
「そ、そうなんです。世間はみんなPlaymakerばかり注目してますけど、私はハノイの騎士を追ってて。」
「…何故、ハノイの騎士を?」
彼の質問がどういう意図なのかはわからなかったが私なりにハノイの騎士にも何か理由があって行動している、純粋にその理由を知りたいと答えた
「…貴女は変わった人ですね。純粋な興味だけでハノイの騎士を追っているなんて。」
「まあ…自覚はしてます、はい。」
「貶してる訳じゃありませんよ。」
彼はそう言葉を紡ぐと拾い集めた資料を私へと差し出す
「此処にはよく来るんですか?」
「まあ、気分転換も兼ねてちょくちょく…」
「では、また明日も会えますか?みょうじ、なまえさん。」
「え?どうして……っていうか、私の名前…」
「貴女の事が一目見て気になってしまったんです。それと名前、資料の中に社員証が挟まってましたよ。」
それだけ告げて去っていく名前も知らない青年に対し、私は真っ赤な顔をしながらその背中を見えなくなるまで見つめていたのだった
名も知らぬ青年との恋の始まり
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いろは様リクエストの了見夢。 少し年上の記者デュエリストがリンクヴレインズではハノイを探してる中、現実で了見と会いお互い恋に落ちる感じとのリクエストでした。 気に入って頂けたら嬉しいです。