黎明の空と同じように染まっていくアイツの頬


「はー、今日も頑張って作業したねえ。」

「そうだな。」



ある休日の夜が明け始める頃

俺と俺達の仲間であるなまえは草薙さんとの作業を終え、星の光が消え始めた薄暗がりの中を帰路に就いていた


「まさか作業に夢中になりすぎて日付が変わってたなんて気付かなかったよ。まあ、今日も休みなのが救いだけどね。」

「日が暮れ始めた時点で草薙さんはなまえに帰った方がいいと言ってたが。」

「2人が作業してるのに帰れる訳ないよー。ハノイの件が片付いたとしてもやる事はいっぱいなんだし。」



そう言葉を紡げば軽快な足取りで階段を下りていくなまえ


確かに俺の復讐は終わり、ハノイの騎士も塔の崩壊と同時に姿を見せなくなった

それでも草薙さんの弟の件や新たなLINKVRAINSでPlaymakerが賞金首になっている事等まだまだ問題は山積みだった為、こうして今でも様々な作業を続けていたのだ



「それにしても遊作はさ、ハノイとの戦いが終わってから表情が柔らかくなったよね。」

「何処がだ。」


先に階段を下りきったなまえが此方を振り返ったと思った瞬間、何故か突拍子もない事を言われる


「初めて会った時はこーんな感じで眉間にシワ寄せててさ、気難しい顔してるなあって思ったもんだけど。」


そう言ってなまえはわざと険しい表情を作って見せる


「気難しい顔で悪かったな。」

「でもね、今は何か憑き物が落ちたって感じ。今みたいに柔らかい表情の方が私は好きだなー。」

「…勝手に言ってろ。」



突拍子もなく告げられる好意の言葉に対し、他人との交流が不得手である俺はただ一言呟くのが精一杯だったのだが

そんな俺の事はお構い無しに彼女はにこにこと笑い、背伸びをして此方の頭を撫でながら言葉を続ける


「あはは、遊作ってば素直じゃないよねえ。でもそういう所も可愛いかも。」

「……うるさい。」



こっちの気も知らずにいい気なものだ


ロスト事件以降、他人と距離を取りながら生きてきた俺の前に現れた草薙さんの親戚だというなまえ

底抜けに明るく、構いたがりの如何にも元気だけが取り柄といった感じのなまえを最初は鬱陶しく思っていたのに


懸命に作業をする姿や此方を気遣う優しさに触れていく度にいつの間にかなまえは俺の中で大きく割合を占めていた位、大きな存在になっていた



「なまえ。」

「あ、ごめん。怒った?」

「違う。」



なまえは俺が抱いてる感情を知らない上、先程の好意の言葉も友愛での意味かもしれないだろう

それでも、この想いを伝えるのは今しかないと思った


「俺は、お前が…」




続く言葉を耳にしたなまえは驚きながらも徐々に頬を赤く染めていき

まるで夜が明けていく黎明の空を見ているようだと、そう思ったのだった


黎明の空と同じように染まっていくアイツの頬

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ましろ様リクエストの遊作夢で、テーマは『黎明』でした。 気に入って頂けたら嬉しいです。
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