恋の訪れはクリスマスと共に
「…ああ、今日は一生忘れられないクリスマスになるわ。」
冬の澄んだ夜空に星々が輝く中、私は小さく言葉を呟く
しかし特別嬉しい事があった訳でもなく、勿論私がロマンチストな訳でもなかった
「仕事でミスして上司に叱られたのを皮切りに財布は落とすわ、平坦な地で転ぶわ…おまけに転んだ拍子に靴のヒールが折れるなんてどんなコンボよ。」
幸い広場の中央から少し離れた所で転んだ為人目にはつかなかったようだが、情けない事に変わりはない
それに今日はクリスマス
家族や恋人と歩いている人達がいつもに増して多い為、惨めな事この上なかった
「…あれ。お姉さん、どうかした?」
「……はい?」
この期に及んで興味本位のナンパか
そんな事を考えながら後ろを振り返った所、その人物には何処となく見覚えがあった
「……あっ。いつも広場でホットドッグを売ってる…」
「そうそう。お姉さん、よく買いに来てくれるから俺も覚えてたんだよ。」
声を掛けてきたその人は今一番お気に入りのホットドッグ屋のお兄さんで、仕事帰りにちょくちょく買いに行ってたから彼の方も私を覚えていたようだ
「…で、お姉さんは何でそんなすみっこで地べたに座ってる訳?」
「まあ…色々理由がありまして。」
そこで私は事細かに今までに起こった不幸コンボの説明をする
それを聞いた彼は何を思ったのか自分の店へと走っていき、男性用と思われる少し大きめの靴を持って戻ってきた
「俺の予備の靴しかなかったけど、何も履かないよりはマシだろ?」
「いや、でもお兄さんの私物を借りる訳には…」
「草薙だ、草薙翔一。お姉さんは?」
「えーっと…みょうじなまえ、です。」
お兄さん…いや、草薙さんに圧倒されながら名乗れば彼は人の良さそうな笑顔を浮かべながら靴を差し出す
「困ってる女性は勿論、なまえさんだったら尚更放っておく訳にいかないだろ?」
さっきまでの私に告げます
確かに今日は一生、忘れられないクリスマスになりました
恋の訪れはクリスマスと共に
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お話を考える上で一番、タイトルに悩みます。