彼女が現れるまで、あと少し
※長編主人公の設定です。
「遊作くん、遊作くん。」
「どうした、なまえ。」
全ての授業が終わった放課後
いつも通り草薙さんの所へ行こうとした俺達をなまえが呼び止める
「二人とも、これから草薙さんの所に行くでしょ?私も一緒に行きたいけど、今日は委員会があるから遅くなっちゃうし…だから今、渡しておこうと思って。はい、遊作くん。穂村くん。」
そう告げたなまえは携えている鞄から2つの紙袋を取り出すと、俺達に1つずつその袋を手渡してきた
「これは?」
「今日はクリスマスだから、クリスマスプレゼントだよ。喜んでもらえるかはわからないけど…」
「その気持ちだけで十分、嬉しい。ありがとう、なまえ。」
「…うん!」
此方が感謝の言葉を告げた所なまえは小さくはにかみ、嬉しそうに笑いながら委員会の仕事へと戻っていく
そして、所変わって草薙さんの店の前
草薙さんにからかわれながら俺達はなまえから貰ったプレゼントを開けてみた
「わ、凄いねこれ。なまえさんの手作りクッキーだ。」
袋を開けてみた所、中にはサンタクロースや雪だるま、星といったクリスマスに関するアイシングクッキーが沢山入っていた
『確かに、これは見事だ。』
『おおー、スゲーじゃん。さっすがなまえ!』
Aiと不霊夢が興味津々にもう片方の袋の中からあれこれとクッキーを取り出していた最中、俺の手中にある袋の中に1つのメッセージカードが入っている事に気が付いた
「メッセージカード…」
そのカードにはなまえが書いただろう、丸みを帯びた文字で『遊作くんだけ、特別だよ。』と書かれていた
何が特別なのかと一瞬思ったが、その理由は直ぐに知る事となる
「これは…俺か?」
袋の底に入っていたのは俺の顔を模して作られたクッキーで、この袋以外には入っていない事もわかった
「何だか嬉しそうだな、遊作。いいものでも入ってたか?」
「草薙さん。…いや、何でもない。」
何でもないとは言ったものの、草薙さん達はからかうように此方を覗いてくる
しかし俺は頑としてその中身を見せる事はなかった
これはなまえが俺の為だけに作ってくれた、特別なものだから
「…もうそろそろなまえが来る頃か。」
小さくそう呟いた後皆に気付かれぬよう、制服のポケットへ忍ばせてある彼女へのプレゼントにそっと触れる
このプレゼントをなまえが喜んでくれる事を願いながら、俺は彼女を待ち続けたのだった
彼女が現れるまで、あと少し
―――――
久しぶりにお菓子を作りたくなりました。