人工知能に芽生え始めた感情
『クソっ!人間どもめ…!』
ライトニングが作った空間内で俺はデータ修復をしつつ、人間達への苛立ちを募らせる
データ修復とは言ってもウイルスに破壊されたデータを完全に修復する事は出来ず、俺は見るも無残な姿になってしまっていて
その事実も人間への憎悪を掻き立てる原因となっていた
「ウインディ様。」
『ああ!?……何だ、あばたーか。』
「申し訳ありません、苛立たせてしまいましたか?」
『別に。苛立ってるのはあばたーの所為じゃないし。』
声を掛けてきたのは俺が作ったAIプログラムのあばたーで
あばたーは少しだけ眉を下げながら、俺の破損した部分へと触れてくる
「ウインディ様。…もしも私があの場にいたら、ウインディ様を守る事は出来ましたか?」
『いーや、あばたーがいた所で何も変わらなかっただろうね。第一、あばたーを別空間で待機させてたのは俺だ。来てたらむしろ命令違反だろ。』
自分が作ったプログラムの中でも一番気に入ってるあばたーに万が一の事があったら困る為、あの時同行すると言ったあばたーに待機命令を出したのは俺で
そして幸か不幸かエコー達は全滅
俺も破壊されかけたものの、待機していたあばたーは無傷で済んだ
だが自分だけが無傷で済んだ事に罪悪感を覚えたのか、来るなと言っても何度もあばたーは俺の所へとやってきた
『あのな、あばたー。何度も言ってるけど俺の所に来るなって言ってるだろ。命令違反で消すよ?』
「ウインディ様がそう、望むなら。」
『…チッ。』
どうしてこういう時だけ従順になるんだか
まるで俺があばたーを消す気がないってわかってるみたいだ
『……ハイハイ、わかったよ。あばたーの好きにすればいいさ。』
「ありがとうございます。」
俺に従順で人間のように想定外の事はしなかった筈なのに、一体何処でバグを拾ってきたんだか
今まで無表情だったあばたーの表情が少しだけ柔らかくなっている事に気付かぬまま、あばたーの僅かな変化に俺は戸惑いを隠せないのだった
人工知能に芽生え始めた感情
―――――
何気に一人称が僕から俺になってましたね。