例え離れても心は一緒
「…いよいよ明日ね、なまえ。」
「うん、何かあっという間だった感じ。まだまだ先だって思ってたのに。」
放課後の誰もいなくなった教室で私と親友のなまえは二人、窓辺で黄昏ていた
「そんな寂しそうな顔しないでよ、葵。二度と会えなくなる訳じゃないじゃん。」
「それは…そうだけど。でも明日からは此処になまえはいない、海外へ行ってしまうじゃない。」
「うーん…まあそれはね、仕方ないっていうか。私を迎え入れてくれる新しい家族の住居が海外だからさ。」
そう、明日からなまえは海外へ行ってしまう
それは本来、とても良い事
今まで物心つく頃からずっと施設で暮らして来たという彼女にとって、初めて家族が出来るのだから
それでも幼い頃から一緒に遊び、家族同然に傍にいてくれたなまえが此処からいなくなってしまう
その事実をまだ私は受け入れられずにいた
「…ねえ、葵。小さい頃二人で宝探しと称した探検に行った事、覚えてる?」
「勿論、覚えてるわ。虹は天使が渡る橋で、そのふもとには天使の宝物があるって絵本で読んだ話。その宝物を探しに出掛けたのよね。」
二人で手を繋ぎながら虹のふもとを目指して歩き続けて
夜になっても探検に夢中で帰って来なくて、後に私達を見つけたお兄様と施設の先生に叱られながら抱きしめられたんだった
「あの時、宝物は見つけられなかったけどさ。ほら、これ。」
そう言ってなまえがポケットから取り出したのは、ハートと天使の羽根があしらわれたお揃いのネックレス
ハートと天使の羽根は私のアバター、ブルーエンジェルのモチーフと言っても過言ではないものだ
「急いで作ったからちょっと雑な部分もあるけど、葵への気持ちはちゃーんと込めたつもり。」
「これを…私に?」
「当然っ。向こうでも葵の活躍、楽しみにしてるからね!」
「…ありがとう、なまえ。このネックレス、大切にするわ。」
次の日の早朝、彼女は家族の待つ海外へと飛び立った
寂しくないと言ったら嘘になるけれど、今の私には貴女がくれた宝物があるから大丈夫よ、なまえ
窓から見える飛行機雲に向かい、私は小さく微笑んだ
例え離れても心は一緒
―――――
幼少期は結構アクティブだったので探検とかしました。