二人だけの秘密
『なまえ、一体何処へ向かっているんだ?』
「んー?まだ秘密っ。」
私に向かって明るく無邪気な笑顔を浮かべる少女、なまえは街中から離れた山道をどんどんと進んでいく
今日は学校の創立記念日とやらでなまえ達は休みらしく、彼女らは朝から草薙殿のワゴン内に集まっていた
そして昼食を取った後暫く休憩も兼ねてなまえは読書を始めるのが普段の行動だったのだがこの日は何故か尊から私が宿っているデュエルディスクを借り受け、何処かへと向かっていたのだ
『どんどん街から離れていってるようだが……なまえ、まさか迷子になったのでは…』
「もう、大丈夫だってば。ほら不霊夢、着いたよ。」
『?』
足を止めたなまえに促され、私はデュエルディスクから現実世界に存在を現す
そこで私が目にしたものは赤や橙、黄色といったコントラストが何とも美しい、見事な紅葉だった
『おお、これは見事な紅葉だ。』
「でしょ?此処は春は桜が、夏は木々の緑がすっごく綺麗なんだよ。私が見つけた秘密の場所、お気に入りの場所なんだ。」
そう言って満面の笑みを浮かべたなまえは私が宿っているデュエルディスクを抱えたまま一本の大樹の下へすとんと座り込む
『だがなまえ、此処はキミだけが知るお気に入りの場所なんだろう。私に教えて構わないのか?』
先程なまえはこの場所を秘密の場所だと、お気に入りだと言っていた
それなのに何故、彼女は私に秘密の場所を打ち明けたのだろうか
「んー。不霊夢とは波長が合うっていうか、何か話してて楽しいし。だから特別に教えてあげようと思って。」
『特別?』
「そ、特別。」
なまえはPlaymaker達とは勿論、学校でも仲の良い友人が沢山いると以前尊が言っていた
その大勢の中から私を特別だという事、そして秘密の場所を教えてくれた事が何故だかとても嬉しかった
「…あ。でも不霊夢、この場所は他の人には秘密だよ?勿論、穂村くんにも。」
そう言葉を紡ぎながらなまえは秘密と示すように人差し指を口元へと持っていく
『わかっている。この場所は私となまえ、二人だけの秘密だ。』
二人だけの秘密、なんて心地好い響きだろう
普段通りなら既に作業を始めている時間な為、草薙殿から居場所を尋ねるメールが届いているのだが…後少し、ほんの少しだけなまえとこの場所にいてもバチは当たらないだろう
心の中で草薙殿達に小さく謝罪しつつ、私となまえは暫く美しい紅葉を満喫したのだった
二人だけの秘密
―――――
紅葉の季節ですね。