彼の傍にいられる事が私の幸せ
「んー…」
「どうしたなまえ、何か悩んでいるようだが。」
「あ、ボーマン。」
此処は電脳空間内のとある一室
軽い軟禁状態の中、難しい顔をしながら唸っている私の元にボーマンが声を掛けてくる
「前にボーマンは言ったよね。自分はイグニス達を統合する為の器だって。」
「ああ、その通りだ。」
「もし統合したらボーマンはどうなっちゃうのかなって、ちょっと考えてた。」
彼が人間ではなくAIだと知ったのはもう随分前の事だ
一応ハッカーの端くれであった私は意思を持つAIがいるとの噂を聞き付け、興味本位でLINKVRAINSの中を毎日探し回っていた
その探し回っていた中で私は一人のデュエリストと出会う
それが彼、ボーマンだった
彼は不思議な存在で姿形は同じなのに、会う度に性格が違うというか…まるで別人のような雰囲気を纏っていたのだが
初めて会った時から私が好きだと、傍にいたいと訴えていたその真っ直ぐな瞳は何も変わっていなかったから私は特に気にしていなかった
その後暫くして私の前に現れた小さな黄色と緑の小人…自らを意思を持ったAI、イグニスだと名乗った彼等はボーマンもまたAIである事、何度彼の記憶を消しても私への想いが消えない事、彼が私の事を欲しているから仕方なく連れ去りに来た事を明かした
「えーっと…連れ去りを断ったら私はどうなるの?」
『まあ強硬手段に出るよね。もしくはデータストームで分解するか。』
「強引以外の言葉が見つからないんだけど。」
『そういう事だ。キミに拒否権はない。』
それ聞くだけ無駄じゃない?と思ったけど私自身、ボーマンに会いたかったのも事実な訳で
彼等の誘い…いや、脅しに従って私がボーマンの元にやってきたのはもう一ヶ月も前の事だった
その間ボーマンの事を色々と知り、最終的に彼が他のAIを統合する為の器だと知った
統合というのは二つ以上のものを纏める言葉であってその結果、彼自身の自我も失われ私の事も忘れてしまうのではないかと最近思い始めていたのだ
「なまえ。イグニス達の統合は未だ誰も試した事のない、未知のやり方だ。従って、どうなるかは誰にもわからない。…この私にもな。」
「まあ、そうだよね。」
「だがなまえ、キミへの想いが潰える事はないだろう。それは今までの私が立証している。」
「…うん。」
確かに何度記憶を消されてもボーマンは私を忘れる事はなかった
不確定な未来に怯えるのはもう止めよう
どんな未来が待っていたとしても、大好きな彼の傍にいられる
それが私の幸せなのだから
彼の傍にいられる事が私の幸せ
―――――
主人公をAIにするか暫く迷いました。