知らぬ間に受け入れていた不確定な要素
「私もライトニング達みたいにAIに生まれたかった。」
電脳空間内に作った私達のアジトとも呼ぶべき存在のこの場所で仲間であるなまえが突然、ぽつりと上記の言葉を紡ぎ出す
彼女…なまえは人間でありながらAIが管理する世界を望み、我々の仲間に加わった経歴を持つ異端な存在だった
『キミらしくないな、なまえ。一体何があった。』
「んー……だって私がAIだったら人間嫌いのウインディや、あからさまに見下してくるハルとも上手くやれたかもしれないと思って。それに人間なんていつまで経っても醜い争いばっかり繰り返してるから私、嫌いだし。」
そう言ってクルクルとデータ上のカードを人差し指で回転させるなまえ
彼女の人間嫌いは今に始まった事ではないが、大方ウインディかハル辺りに嫌味を言われたのだろう
その為に今回、そういった極論に辿り着いたのだと容易に想像出来た
『なまえ、キミは何処までいっても人間で、我々は何処までいってもAI。それは決して変わる事のない事実だ。』
「それは…わかってるけど。」
『だが、それは大した問題ではない。大切なのは我々が人間を管理する世界を作った後でも、キミが我々の側にいる気があるのかどうかだ。』
「…それこそ愚問じゃない?」
なまえは小さく肩を竦めながらカードをデュエルディスクの中へとしまいこみ、私の方へ顔を近付ける
「人間に絶望してた私を救ってくれたのはライトニングでしょ。ライトニングの為なら私、命だって賭けられるよ。」
『まだ命を賭けてもらっては困るな、なまえ。キミにはまだやってもらう事があるのだから。』
「わかってる。」
人間を仲間に加える等、かつての私では考えられない事だっただろう
しかしなまえだけは我々を裏切る事はしないと、何故かそう言い切れる
私にとって不確定な要素は不要な物だと、そう思っていたのだがな
彼女の肩に乗りながら、私は自らの僅かな変化を無意識に受け入れ始めている事にまだ気付いていなかった
知らぬ間に受け入れていた不確定な要素
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ウインディやハルなら嫌味の1つや2つ、言いそうな気がしまして。