やたら面倒だけど心底嫌いになれない失敗作
「ウインディー。ねえねえ、ウインディー。何処にいるのー?」
『…げ。またアイツか。』
ライトニングと僕が作った空間内で何処からともなく聞こえてくる、僕を呼ぶ呑気な声
響き渡る声の主に心当たりがありまくった僕は急いで身を隠そうとしたものの、どうも一足遅かったらしい
その張本人が即座に僕の姿を見つけ、満面の笑みを浮かべながら小さな僕を勢いよく抱きしめる
「見つけたー、ウインディ!」
『…はあ。いい加減僕に付きまとうのはやめてくれないかな、あばたー。』
僕の言葉等まるで聞こえていないのか未だに抱きしめたままのあばたーに対し、盛大な溜め息が出てしまう
このあばたーという人物はライトニングが作った僕達と同じ存在…所謂AIってやつなんだけど、どうにも作る過程で偶発的エラーが生じたらしい
AIのクセに論理的に考える事が不得手で、むしろ人間のような思考をしてしまう失敗作だった
そんな失敗作、さっさと消してしまえばいいのにライトニングは何を思ったのか未だにあばたーを消そうとはせず、好き勝手にやらせている
ただの気まぐれで生かしてるだけなのかもしれないけど、何故か異様に懐かれてしまった側の僕からしたらいい迷惑…というか、あばたーの面倒を見るのもそう楽な話じゃない
『あばたー、何でキミは僕に付きまとうのさ。そもそも付きまとうのなら、生みの親であるライトニングの傍にいればいいじゃないか。』
…この言い方じゃライトニングに面倒事を押し付けてるようにも聞こえるけど、怒られるかな
だが僕の言葉等何のその、あばたーは全く意に介していないのかニコニコしながら僕の頬部分を人差し指でつついてくる
『…あばたー。キミ、僕の話聞いてた?』
「うん、勿論聞いてたよ。だって私が傍にいたいって思ったのはライトニングより、ウインディだったから。だから私はウインディの傍にいるの。」
『何それ。』
此方には理解不能な理屈を並べ立てながらそのまま僕を可愛がろうとするあばたー
まさに暖簾に腕押し、ぬかに釘
僕が何を言ったとしても、結局あばたーは何度でも僕にくっついてくるんだ
『…はあ。もう面倒だから勝手にしなよ。』
「うん!勝手にする!」
とてもわかりやすく喜びを露にするあばたーに対し何処となく嬉しさを覚えるなんて、だんだん僕も毒されてきてるのかも
そんな事を考えてる僕自身がちょっと嬉しそうな顔をしてるだなんて、ライトニングに言われるまで全く気付かなかった
やたら面倒だけど心底嫌いになれない失敗作
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ウインディ、清々しい程の悪役でした。