私に与えられた存在意義
「……。」
『なまえ。』
「……。」
『なまえ。』
「……あっ。ご、ごめんなさいライトニング。呼んでる事に気付かないで。」
『いや、大した用ではないんだ。ただなまえ、キミの表情が少々曇っていたのが気になってね。それで声を掛けたという訳だ。』
光のイグニス…ライトニングはそう言葉を紡ぎながら彼のオリジンである草薙仁から離れ、浮遊しながら私に近付いてくる
私はライトニングが作った人工知能
所謂ジェネレーション・ツーと呼ばれるAIで、ハルと同時期に作られた存在だ
でも私は初期に作られたビットやブートよりもデュエルが弱い上、ボーマンのようなイグニスを統合する為の器でもない
こんな如何にも足手纏いのような私がいつまでもライトニングの傍にいてもいいのだろうか
そんな事を数日前から考え込んでしまい、私は自分自身の存在意義を見出だせずにいたのだ
『なまえ、キミが何を考えているか当ててみせよう。大方他のAI達との差を考えてしまった為に自分の存在意義が見出だせず、その所為で悶々としているんだろう?』
「…一字一句間違ってないわ、ライトニング。よくわかったわね。」
『キミの考えている事は手に取るようにわかる。』
そう言って目を細めるライトニングを流石だと思う反面、やはり私のような取り柄のないAIは消えた方が彼の為になるような気がしてならない
そう考えていたまさにその瞬間、彼は私の眼前に移動してくるとそのまま私の頬へ静かに触れてくる
「…ライトニング?」
『私は、自らの傍にいてほしい存在を願ってキミを、なまえを作った。私がなまえを必要としているんだ。…それだけの理由付けでは不満かな?』
ライトニングの言葉はいつでも無駄がなく、合理的な事しか口にしない
その彼が言うのだから、今の言葉は本当の事なんだろう
「…ありがとう、ライトニング。」
『何故礼を言う、なまえ。私はただ、事実を述べただけだが。』
「それでもライトニングに感謝したいと思ったからお礼を言ったの。所謂、理屈じゃないってやつね。」
『なるほど、そういうものか。』
こんな何も取り柄のない私だけれど、彼が私の存在を願い、必要としてくれている
それだけで心がスッと軽くなった気がするのは気の所為ではないと思う
Playmaker達に宣戦布告をした今、ライトニング達が人間を支配下に置くのか、それとも彼等が勝って此方側を消しに来るのか
今後この世界、引いては現実世界がどうなるかは私にはわからない
それでもきっと、私は最期までライトニングの傍にいるんだと思う
だってライトニングの傍にいる事、それこそ彼が私に与えてくれた存在意義なのだから
私に与えられた存在意義
―――――
自分の欠点も熟知している敵キャラは珍しい気がします。