鈍感な幼馴染


「……。」

「おかえりー、健碁。てかこんな時間に帰宅?残業もいいけど、ご飯位食べた方がいいよー。」


仕事を終え、自宅へ戻った私の目に飛び込んできたのは見知った人物が勝手に私の自宅に入り込み

勝手に食事を作っているという、直ぐにでも頭が痛くなるような光景だった



「またお前か、みょうじ。」

「あっ、お邪魔してまーす。」

「順番が逆だろう。」


勝手に自宅に上がり込んでいたこの人物は幼馴染兼、腐れ縁のなまえみょうじで

私と違いネットワーク技術は絶望的な反面、ピッキング技術はずば抜けて高いみょうじはこうして毎回勝手に自宅の鍵を開けて不法侵入し、勝手に寛いでいる事がままあったのだ



「いい加減不法侵入するのをやめろ、みょうじ。通報するぞ。」

「通報したら健碁がハッカーって事とブラッドシェパードって事バラすしー。」


またこの決まり文句だ

半ば脅しとも取れる言葉に私はそれ以上何も言えず、押し黙ってしまう



「まあまあ。通報はまた今度考えるとしてさ、とりあえずご飯出来たから食べなよ。」

「いらん。」

「もー、私が作りに来ないと健碁ってばカップ麺とか栄養材とかそんなので済ますじゃん。ほら、疲労回復に豚肉のしょうが焼き!」



そう言って私の前に出されたのは出来上がったばかりの豚肉のしょうが焼き

みょうじの言葉に乗るのは癪だが腹が減っているのは事実だった為、私は無言でみょうじの作った料理を食べ始める



「健碁、おいしい?」

「一応、食べられない事はない。」

「せめておいしいって言ってくれればいいのにー。健碁ってば女心がわかってないんだからあ。」



わかっていないのはみょうじの方だ


不法侵入してきた人間を本気で迷惑、鬱陶しいと思っているなら力ずくで追い出す事も出来るのに私がそれをしないのは何故か

少し考えればわかる事だろうに



「…お前がもう少し、察しのいい人間だったらな。」

「えっ、察するって何を?…あ。もしかして健碁、髪切った?」

「切ってない。」


我ながらとんでもなく鈍感な女に想いを寄せてしまったものだ

そんな私の事等お構い無しに満面の笑みを浮かべながら他の料理を進めてくるみょうじに対し、私は気付かれないよう小さく溜め息を吐いた


鈍感な幼馴染

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道順さんはあまり食事に気を使わないタイプな気がします。
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