彼女は僕のお気に入りのプログラム
「ウインディ様、この花は何という名前ですか?」
『これは沈丁花っていう名前さ。白やピンクの花がキレイだろ?』
「はい、とても綺麗です。」
僕が作った風のワールドに佇む人型プログラム、なまえはワールド内に咲き乱れている様々な花を興味深そうに眺めている
コイツは僕がエコーの次に作ったものでエコーとは違い、より人間の少女に近い容姿と思考を持ったプログラムだ
何故そんなものを作ったかと問われればただの気まぐれとしか言い様がないんだけど、それでもエコーと違った反応を見せるなまえを僕は割と気に入っていた
『ちなみに沈丁花には栄光、不死、不滅…永遠なんて花言葉があるんだよ。寿命とかで死ぬ事のない、僕らイグニスにぴったりの花だと思わないか?』
「永遠…確かにウインディ様達にお似合いの花だと思います。」
『だろ?』
僕達は人間と違って消されたりしない限り、永遠に生き続ける事が出来る
その点人間はいつ死ぬかわからない、そんな恐怖を抱えながら生きているちっぽけな存在だと思う
『…そういえば人間寄りの思考を持ったイグニスもいたっけ。』
まあ人間なんて信用するに値しないと考えてる僕にとってはどうでもいい事だけど
そんな事を考えていた中、なまえが何故かこっちをずっと見つめているのに気が付いた
『何?なまえ。』
「ウインディ様。…私は?」
『私が何だって?』
「私は花で例えたら、何という花なのでしょう?」
さっき僕らの事を沈丁花に例えたから興味を持ったんだろう、小さく首を傾げながらなまえが尋ねてくる
『うーん、そうだな……強いて言うなら、なまえはそこに咲いてるオドントグロッサムかな。』
「…オドント、グロッサム?」
『そう、オドントグロッサム。花言葉は自分で調べられるだろ?何せ僕が作ったプログラムなんだから。』
「わかりました、調べてみます。」
ほとんど受動的か機械的な受け答えしか出来ないんだけど、そういうAI的な部分とちょっとだけ人間っぽい部分を持ち合わせているなまえを僕は結構気に入っている
オドントグロッサムに例えたのもその所為
『…サイバース世界が再興したらなまえも連れてってやろうかな。』
僕が例えたオドントグロッサムを興味深そうに眺めているなまえを見つめながら僕は一人、ぽつりと呟いた
彼女は僕のお気に入りのプログラム
―――――
オドントグロッサムの花言葉は『特別な存在』です。