クールビューティーなあの子が赤面した理由
「みょうじさん。今日の昼休み、また勉強教えてくれない?」
「あっ、私もー。」
「私で良ければ、いつでも。」
朝礼が始まる前に教室へ入った僕の前で行われる言葉のやり取り
数人の生徒達がある一人の少女に勉強を教えてくれと頼み込んでいる、よく見慣れた光景だ
その中心にいる少女はみょうじさんといっていつも冷静沈着、テストの時は学年5位以内は当たり前
勿論勉強だけでなくスポーツも万能といった、まさに非の打ち所がない完璧な女の子だ
転校してきた時からその凛とした姿に僕は密かに惹かれていて
何とか親しくなりたいと思っているんだけど、なかなか話す切っ掛けが作れずにいた
「みょうじさん、放課後は?」
「ごめんなさい、今日は用があるの。」
悶々と考えていた中で聞こえてきた放課後に用があるという、みょうじさんの言葉
塾にでも行ってるんだろうか?
そんな事を話す切っ掛けに出来ないかと考えたものの、結局今日も彼女と言葉を交わす事が出来ず
僕は大きな溜め息を吐きながら帰路に就いていた
「……はあ。」
『そんなに溜め息を吐く事ないだろう、尊。声を掛けられなかったのはまだ15回じゃないか。』
「そんなの数えなくていいよ、全く……うわっ!」
「きゃっ!」
帰るまでの道程でも相変わらずな不霊夢に再度溜め息を吐いた瞬間、曲がり角で誰かとぶつかってしまう
「ごめん、大丈夫…って、みょうじさん!?」
「…穂村くん。」
まさかみょうじさんとぶつかってしまうなんて、考えもしなかった
「ご、ごめんみょうじさん。ぶつかった弾みでみょうじさんが買った物、散らばっちゃって…」
慌てて彼女の荷物を拾い集めていた所、ふと紙袋から顔を覗かせている雑誌に気付く
よくよく見るとそれは今日発売のLINKVRAINSに関する情報が載っている雑誌で、僕のアバターであるSoulburnerが初めて掲載されると噂の雑誌だった
勿論草薙さんの尽力で情報はないに等しいものだったんだけど、不霊夢には散々冷やかされていたからその雑誌が今日発売である事はよく覚えていた
「もしかしてみょうじさん、Soulburner
のファン…とか?」
僕がそう尋ねると見る見る内に頬を真っ赤に染め上げていく彼女
…こんなに可愛い反応をするみょうじさんは初めて見た
「…ひ、拾ってくれてありがとう、穂村くん。…それじゃ。」
彼女に見とれていた僕を余所に相変わらず真っ赤な顔をしたみょうじさんは散らばった荷物を慌ててかき集め、一目散に走り去ってしまう
「…どうしよう不霊夢。僕今、すっごく嬉しい。」
『気になる対象はSoulburner、だがな。』
不霊夢の言う通り、彼女が気になっているのは僕じゃなくてアバターのSoulburnerなんだけど
それでもみょうじさんが僕のアバターの事を気にしてくれている
それだけで僕は嬉しくて、人目もはばからずに大きくガッツポーズをしていたのだった
クールビューティーなあの子が赤面した理由
―――――
すみません長くて。